6年間「死体役」をやり続けた彼女が見つけた道 サヘル・ローズさん、目標は遠くに置くといい

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6年間、死体役をやり続けたので、死に方は上手くなりましたよ(笑)。だけど、テロリストの役を演じたときは正直、悔しい気持ちが大きかったです。

なぜ、イラン人というだけで、中東の顔立ちをしているというだけで、テロリストの役が回ってくるんだろうと。報道から伝わる情報だけだと、イランは危険で怖い国のようなイメージを持たれがちですが、歴史は古く、文明発祥の地とも言われているほど素晴らしい国なんです。古代遺跡などの世界遺産や美しい伝統工芸がたくさんあることも、あまり知られていません。

イランに対するネガティブな印象を払拭して、もっと良い部分や素敵なところを多くの人に知ってもらいたい。そのためにも私自身が芸能界で確かなポジションを築く必要があると強く感じました。

「その国の印象は報道の仕方によって決まってしまう」とサヘルさん(撮影:尾形文繁)

日本人の役を演じたい。道なき道をつくった

――そこからどうやってチャンスをつかんでいったのでしょう。

日本の芸能界においては、ダブルの方々はすごい活躍されていますけど、純外国人が活躍できる場というのは意外と少ないんですね。テレビの情報番組の場合、ひな壇のゲストやコメンテーターなどの「外国人枠」で呼ばれることはありますが、役者の仕事となるとさらにチャンスが狭まります。

私は、見た目は純外国人ですが、日本の表現の世界で日本人としての役もやってみたいという思いがありました。ですが、日本人の役はまずやらせてもらえないですし、外国人の役をいただいても、たどたどしい片言の日本語の台詞がほとんどでした。

日本人の方でも海外で生まれ育っている場合、その国の言語をマスターして、ネイティブな言葉できちんと話せていますよね。「外国人イコール片言」というイメージも、偏った見方なんじゃないかなって、疑問に思ったこともありました。

ただ、こうして嘆いていても何も変えられません。道がなければ、自分で道をつくるしかないなって、思ったんです。

それからはきちんとしたイントネーションの日本語を話せるようになろうと学びに行ったり、テレビやラジオのお仕事も一つひとつ全力で取り組んだり……。そうしていくうちに、少しずつ「サヘル・ローズ」の名前を知ってもらえるようになって、自分が本当にやりたいと願っていた日本人としての役を演じる機会にも恵まれました。

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