がん(悪性新生物)による死亡リスクに、所得による格差が見られることが、高齢者約1万5000人を最長4年間追跡した調査で明らかになった。男性高齢者(65歳以上)のうち、「所得200万円未満」の人ががんによって死亡するリスク(累積死亡割合)が、「所得400万円以上」の人の1.90倍に達した。また、「教育歴13年以上」に対して「6~9年」が1.46倍と高かった。
調査結果を発表したのは、平井寛・日本福祉大学健康社会研究センター主任研究員。1月21日に札幌市内で開催された日本疫学会学術総会で報告した。
平井氏ら日本福祉大や浜松医科大学を中心とする研究者は、所得水準などの経済格差と健康状態との関係について、愛知県や高知県内の自治体住民への調査を基に解明を進めている。その調査を踏まえ、低所得の人ほどがん死が多いことが、日本で初めて報告された。
これまでがんについては、禁煙や食生活の改善、検診などの対策が講じられてきた。ただ、「検診は社会経済的地位の低い人ほど受診率が低い。健康情報の普及啓発も、教育水準の高い人や意識の高い人には効果があっても、そうでない人には効果が期待しにくい」(平井氏)。
こうしたことから、「従来型の対策だけでなく、社会保障や教育(学習機会)の拡充、税制見直し(所得再分配機能の強化)などの取り組みが必要だ」と平井氏は指摘している。
(岡田広行 =週刊東洋経済2011年2月5日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら