不動産会社が期待するデジタル証券の魅力と課題 三井物産、ケネディクスは先陣を切って参入

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MDMは3月、第2弾として群馬県・草津温泉の旅館の信託受益権約20億円を裏付け資産とするSTを公募した。コロナ禍でも稼働率が8割を超える人気施設で、旅館の運営会社とは長期で固定賃料を受け取る契約を結んでいる。草津温泉の旅館という親しみやすさも決め手となった。

MDMはST向けに不動産を約700億円確保しており、準備ができた物件から順次公募する構えだ。

不動産ファンド運用大手のケネディクスは昨年8月、渋谷駅近くの賃貸マンションの同じく信託受益権約14億円をSTによって公募した。

中尾彰宏執行役員デジタル・セキュリタイゼーション推進部長は「賃貸マンションという投資対象の分かりやすさと、築浅かつ好立地という安定性。STを象徴する物件を選んだ」と話す。こちらも募集金額を上回る個人投資家からの反響があったという。

中間コストを省ける利点

ケネディクスがSTに参入した背景にあるのは、既存のJリート市場が抱える課題だ。「ミドルリスク」を掲げるJリートだが、足元では株式同様、価格変動が大きい。本来は個々の不動産を裏付けとする投資口価格も、現在はJリートの格付けやスポンサー企業の信用力の影響を受けている。STを通じて、本来あるべきミドルリスクの投資を追求する。

渋谷区神南のマンションをSTとして公募した(写真提供:ケネディクス)

ケネディクスは渋谷に続いて、3月には東京都北区の学生寮を裏付け資産とするST約20億円を公募した。こちらも学生寮という馴染みのある用途が特徴だ。

「今後はファンドの量産体制に入る。来年には、毎月新たなSTを公募していきたい」(中尾氏)

個人投資家のみならず、投資を募る不動産会社にもSTのメリットを享受する。筆頭は出口の多様化だ。

TMI総合法律事務所の成本治男弁護士は、「中間コストのかかる機関投資家と比べて、個人投資家から直接出資を受けるSTは、利回り以外の特典も組み合わせれば、売手からすればより高い価格で売却しうる。個人投資家にとっても、これまで機会のなかったプロ向けの不動産に投資ができる」と指摘する。

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