不動産会社が期待するデジタル証券の魅力と課題 三井物産、ケネディクスは先陣を切って参入
兵庫県神戸市に浮かぶ人工島「六甲アイランド」。昨年末、ここに立つ物流施設の信託受益権(賃料などを受け取る権利)が1口約50万円で個人投資家向けに販売されたところ、募集総額約8億円が約8時間で完売した。
「『ありそうでなかった投資商品』だった点が評価された」
ファンドを運用する三井物産デジタル・アセットマネジメント(MDM)の上野貴司社長は手ごたえを得る。今回発行されたのはJリート(上場不動産投資信託)の投資口でも、クラウドファンディングの出資持分でもない。「セキュリティ・トークン(ST)」だ。
不動産投資のいいとこ取り
STとは、ブロックチェーン技術を用いて電子的に発行されるデジタル証券を指す。あらゆる金融商品や動産を証券化できる期待の技術だが、一見デジタルとは縁遠い不動産業界からの注目も集めている。
『週刊東洋経済』の4月11日(月)発売号では「テクノロジーの未来」を特集。GAFAMが狙う次世代の市場やブロックチェーン技術に基づく新たな概念「Web3.0」について、総まくりで解説している。
なぜ不動産会社はSTに期待するのか。それは、プロの投資家が中心だった不動産市場における、個人投資家、とりわけ投資未経験者層の参入に効果が見込めるとみているからだ。
STは従来の不動産投資手法の「いいとこ取り」をした商品とされている。数十万円からの投資が可能で、現物不動産よりもハードルが低い。
裏付け資産となる不動産の鑑定評価額が基準となるため、Jリートのような急激な価格変動もない。
近年普及している不動産クラウドファンディングと比較しても、STはファンドの償還を待たずに途中で出資持分を売却できるうえ、税制面でも有利だ。「株式に比べてリスクが低く、投資対象が分かりやすい不動産は(未経験者が投資を行うのに)適している。STによる投資体験を通じて、『投資は怖い』という先入観を変えたい」(MDMの上野氏)。
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