ノーベル賞「文学賞と平和賞」に末っ子が多い理由 物理学、化学、経済学、医学には長男長女が多い

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サロウェイはまた、兄弟がともにメジャーリーガーになった700名を分析し、弟のほうが盗塁の試みを10.6倍もすることを突き止めました。10倍ですよ。

お兄ちゃんのほうはというと、無謀な盗塁をあまりしません。もし盗塁に失敗してアウトにでもなったら、元も子もないと判断するのでしょう。お兄ちゃんはそういう危険をあまり冒したくないのです。

その点、弟は違います。リスクをとるのに躊躇しません。自分が走れると判断すれば、積極的にチャンスを狙っていく、という挑戦的な姿勢を持っているのです。そういう姿勢が功を奏するのか、サロウェイによれば、弟のほうが、お兄ちゃんに比べて盗塁を成功させることも3.2倍多かったといいます。

どちらがよい、というわけではない

リスクをとるのがよいのか、それともリスクを避けたほうがいいのかは状況によります。どちらのほうがよい、というわけではありません。ただ、「そういう事実がある」ということを述べているだけです。

もし自分が兄妹の下の人は、「リスク・テイカーになりやすい」という事実を知ると、「なるほど、だから私は小さな頃から、危なっかしいことばかりやっていたのか」ということに納得できるかもしれません。私がそうでした。

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私には、姉がおりますので、やはりリスク・テイカーなところがあります。長女の姉は、石橋をたたいて、たたいて、それでも石橋を渡らないくらいにリスクを回避しようとしますが、弟の私のほうは、がむしゃらに突き進んで痛い思いをすることが多いタイプです。まさにサロウェイが明らかにしている事実どおりなので、笑ってしまいますね。

兄弟の出生順位に関しては、自分ではどうにもならないことなので、それはもう受け入れるしかないのですが、自分が長男であるとか、末っ子であるということに向いている適性や適職というものがあるはずですので、そういうものを探してみるとラクな人生を歩めるのではないでしょうか。自分に不向きな仕事をするのは苦痛でしかありませんからね。

内藤 誼人 心理学者、立正大学客員教授、アンギルド代表取締役社長

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ないとう よしひと / Yoshihito Naito

慶応義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。著書に『世界最先端の研究が教えるすごい心理学』(総合法令出版)、『いちいち気にしない心が手に入る本』(三笠書房)、『図解 身近にあふれる「心理学」が3時間でわかる本』(明日香出版社)など多数。その数は200冊を超える。

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