精神病院に「突如閉じ込められた人々」の壮絶体験 理解に苦しむような話だが、残念ながら現実だ

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こういった個別の実情はNPOなどの地道な調査によって一時的に明らかになってはいるが、病院を評価する判断材料は依然として限られているようだ。したがって患者や家族は病院選びに苦心するしかなく、その結果として医療保護入院にまつわるトラブルも起こりやすくなっているのだろう。

向精神薬は身体拘束と同じ

医療保護入院によって、本来なら入院する必要のない“患者”を長期入院させ、動けないように身体拘束したり、薬漬けにしたりして本人の自由を奪う──。にわかには信じがたいことだが、そんなことが実際に行われていることが、本書を読むと嫌でもわかる。

病院が身体拘束を行う場合は家族の同意を得る必要がある。しかし、向精神薬はたとえ大量に飲ませる場合でも、家族に同意を求めることすらない。「病院の秩序のため」「家族のため」と言われ、患者は薬を強制的に飲まされる。
患者を過度に沈静化して無抵抗にするという点で、向精神薬は身体拘束と同じだ。その意味で、向精神薬の投与は「化学的拘束」とも言われる。入院中、患者は看護師の前で薬を飲み、しっかり飲んでいるか確認される。口を開いて飲み込んでいるかまでみられることもある。(152ページより)

そこに人権という概念が欠けていることは、誰の目にも明らかだ。

なお薬の問題に関しては、本書の核である精神科病院の現実と同様に衝撃的なのが、第5章で明らかにされている「子どもへの投薬」だ。児童養護施設に、子どもたちを薬漬けにする現実があるというのである。

「児童養護施設で薬を飲んでいた6年間、中でも中学校時代の3年間はとにかく体がだるくて、登校しても教室ではずっと寝ているような状態でした」
現在、高校2年生の遠藤裕子さん(16歳、仮名)はそう振り返る。遠藤さんは7年前の春、父親から虐待を受け、児童相談所での一時保護を経て、神奈川県内にある児童養護施設に入所した。当時はまだ小学4年生で、突然親元から離された寂しさのために泣き暮らす毎日だった。
「この子、薬を飲んだほうがいいんじゃない」
「ほかの子に影響を与えるといけないから、いったん薬を飲ませよう」
施設の職員がそう打ち合わせ、総合病院の精神科に連れていかれたことが、向精神薬の服用のきっかけだった。(158ページより)
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