精神病院にいきなり4カ月入れられた彼女の告白 自治体職員から「車で話そう」と応じた後の凶体験

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発達障害と診断され、精神科病院に強制入院させられた桜井春香さん(仮名)(記者撮影)
本人の意思を無視した長期強制入院、病院への強制移送、身体拘束、薬漬け……、日本の精神科病院を取り巻く現状は、世界標準からかけ離れた異常な点ばかりだ。そんな日本の精神医療の抱える現実をレポートした、本連載「精神医療を問う」全15回に大幅加筆した書籍、『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』が3月11日に当社から刊行された。
連載内では盛り込めなかった、当事者たちの切実な声から明らかになった日本の精神医療が抱える深い闇の実態を、さらにお伝えしたい。

自治体職員から受けたとんでもない仕打ち

連載中でもさまざまな角度から取り上げたとおり、本人の望まない、精神科病院への長期にわたる強制入院が、いまも多く行われている。それでもこうした病院にさえ近づかなければ、そうした憂き目に遭うことなどないと感じているかもしれない。

だが、残念ながらそうではない。ある人を精神科病院に入院させたいと思う家族や親族が1人でもいれば、ある朝突然、屈強な男たちがあなたの自宅に上がり込み、無理やり精神科病院へ移送されることがある。それどころか自治体の思惑で、そんな事態に陥ることもあるのだ。

男たちが所属するのは、「民間移送会社」だ。

「市の職員から、『車で話をしよう』『話すだけだから』と言われたから了承しただけで、まさか子どもと引き離されて、精神科病院に連れていかれるなどとは夢にも思いませんでした」

『ルポ・収容所列島』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

茨城県に住む30代女性の桜井春香さん(仮名)は、20代の頃に経験した自治体職員からの仕打ちに、今も信じられない思いだと話す。

桜井さんは2016年に未婚のまま長男を出産し、シングルマザーとなった。出産直後に児童相談所は長男を職権によって一時保護した。これは市からの要請によるものだった。市は桜井さんが妊娠後期にも仕事を続けていたことや、ベビーバスが用意されていなかったこと、部屋が6畳で狭いことなどから、彼女に育児能力がないと判断したようだった。

当然、桜井さんは市からのこうした一時保護要請に納得ができず、市役所内や彼女の自宅で何度か押し問答が生じたことはあった。長いやり取りの末、彼女の元に長男が戻ってきたのは、翌2017年正月三が日明けのことだった。

だが、ようやく訪れた親子の平穏な日々は1カ月も続かなかった。

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