「緊急の帝王切開で手術室に入り、出てきたときには卵管結紮されていました。自分のまったく知らないところで不妊手術をされていたと聞いたときはショックでした」
今年1月30日、日本弁護士連合会に人権救済の申立書を提出した米田恵子さん(43歳)は、その心中を吐露した。申し立ては旧優生保護法下での強制不妊手術の救済策が議論される一方、条項の削除後も、精神障害者などに不妊手術が行われている実態を告発するものだ。
連載第1回「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験」(2020年1月28日配信)で詳しく報じたとおり、米田さんは今年1月上旬まで、精神科病院に長期入院していた。最後の子どもを分娩し不妊手術が実施されてから1年後の2016年2月に入院し、その後院内での生活はおよそ4年間にわたった。
当事者からの声が140件以上集まった
これを報じた記事への反響は大きく、本連載の情報提供フォーム(文末に設置)には、すでに140件を超える当事者や医師、看護師、精神保健福祉士など医療関係者からの切実な声が寄せられている。どれも日本の精神医療の抱える問題を告発するものばかりだ。また、「本人も家族も退院を望んでいるのに、なぜ退院できなかったのか。その理由を知りたい」という読者からの声も多く届いた。今回はその理由に迫りたい。
米田さん自身も、入院当初はすぐに退院できるものだと思っていたという。ところが主治医からは「何でも自分の思うとおりになると思わないでください。私はあなたのことを信用していません」と言われ、「パーソナリティ障害」との診断名を付けられた。退院の見通しが立つまで、まだ1年近くかかると通知された。