「保育士が叱らなくなった保育園」の画期的仕掛け 連絡帳もスマホOK、保育士も保護者も大助かり

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保育施設学校法人くるみ学園に飾られた楽しい写真(写真:著者撮影)
長い間、保育業界の問題として注目を集めていた待機児童。その一因とされてきた保育士不足は、コロナ禍における新しいライフスタイルや少子化の加速などの影響で待機児童問題が解決しつつある今もなお、大きな問題となっている。地方や一部の都市では0歳児の定員割れが顕在化しており、保護者や保育士からは「選ばれる園創り」を行うことが、園経営の最重要テーマになりつつある。
未来にあるべき保育施設の姿を提言する書籍『保育施設の未来地図』では、土岐泰之氏が保育施設を取り巻く課題の解決に挑む当事者たちの様子を紹介。ICTの力を活用しながら進める取り組みは、保育の現場をどのように変え、子どもたちや保護者、保育士の幸せへとつなげていったのか。ここでは2つの園の取り組みを取りあげる。

栃木県栃木市にある「認定こども園さくら」のICT化は非常に早く、1990年代後半までさかのぼります。同園では、片手間の事務作業が多い保育の世界で、「人は人にしかできないことに集中すべき。テクノロジーに任せられるところは任せたほうがいい」という考えのもと、保育士から事務作業を〝はがす〟ことで、保育士の専門性を高めました。

片手間の事務作業が多い保育の世界

保育の世界は、「ついでに、これも」という「片手間の事務作業」が本当に多いです。

たとえば保育参観があると、保護者には事前にお知らせのプリントが配られます。プリントには「キリトリ線」があって、出欠を提出するようになっています。これをまとめて集計する作業は、保育士が手作業で行います。期日までに提出していない保護者がいないかを確認し、未提出の人には催促します。出欠をまとめる係の保育士からは「○○組はまだですか? 早く出してください」との確認も入るでしょう。細かいことですが、なかなかの手間です。

ただ、こういった今までのやり方を変えるとなると、職員の抵抗もあります。しかし、同園では「これでラクになるなら、やってみよう」となりました。そして、職員らがデジタル化することで効率化できそうな事務作業を洗い出し、ICT化を進めて事務負担を減らすことから始めたのです。

時間に追われることが減ると、保育に向き合う時間が増えます。そうやって生まれた時間を有効に活用するために、職員室の環境も雰囲気を変えていきました。

取り組み始めた当初は保育施設向けのソフトウェアなどありませんから、自分たちでソフトを作って、登降園管理などをデジタル化していきました。中古のタブレットPCを買ってきて、子どもたちが登園したことを確認したらスタッフが画面でポチっと入力する……と、こんな具合です。

2010年代に入ると、保育参観など園のイベントは保護者にメールで通知するようにし、出欠は携帯電話の画面から入力してもらうようにしました。こうすることで出欠は自動となり、未提出者の確認も簡単にできるように。圧倒的に事務作業の負担が軽減されました。

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