「保育士が叱らなくなった保育園」の画期的仕掛け 連絡帳もスマホOK、保育士も保護者も大助かり

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さらに紙の連絡帳も廃止し、保護者からの登降園時間の連絡や、園での様子を保護者に知らせる連絡は、すべてアプリで行うようになりました。スマートフォンやタブレットの操作に抵抗感を持つ職員もいましたが、プライベートではSNSを使っているので、園で使うアプリにもすぐに慣れていきました。

連絡帳や登降園連絡をアプリで行うようになったことで、保護者も時間にゆとりができました。前夜や当日の朝に連絡帳を書かなくてもよくなったため、子どもたちを園に預けてから、日中手の空いたときに連絡事項をスマホなどで送信してくる保護者も多くなりました。

当たり前のことかもしれませんが、ICT化を進めたからといって子ども主体の保育が実現できるわけではありません。そういう意味で、認定こども園さくらは子ども主体の保育を実現し、推進するためのツールとして、ICTの力をうまく活用している例だと考えています。

保育施設でICTを活用する前後の比較調査(認定こども園さくら)。エンゲージメントや業務負荷の軽減等の項目で大幅にスコアが伸びている(同書より)

続いて紹介するのが、学校法人くるみ学園です。同園は千葉県柏市で幼保連携型認定こども園、認可保育園、小規模保育事業を、沖縄県中城村で企業主導型保育事業を運営しています。学園の理念は「やってみよう」という、とてもシンプルなものです。セットで、「できる」「できた」「わかった」という言葉も掲げています。

保護者や保育士、子どもたちなど、園に関わるすべての方にわかりやすいもの。自発性や自主性を大切にし、自分で考え、判断する力を養ってほしい。そんな思いを込めています。

子どもの活動を写真や動画に収める

園が変わるきっかけは2015年。当時、保育士たちの働く環境はかなり厳しく、ゆとりがまったくありませんでした。休憩時間も満足に休めず、定時もあってないようなもの。有給休暇もほとんど取ることができない状況でした。保育士たちに「ここで長く働きたい」「ここで子どもたちと向き合っていきたい」と思ってもらうためには、働き方を大きく変える必要があったのです。

同園がドキュメンテーション(子どもの活動を写真や動画、音声、文字などで視覚的に記録すること、またその記録)に本格的に取り組み始めたのは、2020年4月頃です。当時は市販のソフトを使って作成していましたが、その後、保育ドキュメンテーションに特化したドキュメンテーションツールを導入しました。

園のスタッフは、子どもたちに行事の余韻を楽しんでほしいという願いから、土曜日の行事が終わった後の月曜日に、園児と一緒に写真を活用したドキュメンテーションや、制作物を掲示しています。

文字だけの情報より、写真があったほうが子どもたちの成長をより詳細に記録できますし、紙だと「書いておしまい」になりがちです。デジタル化することで、過去から今までの流れを追うことも簡単にできます。

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