意味あった?東証市場改革「完全骨抜き」の全内幕 1部上場の84%が横滑り、海外マネー流出の危機
障害が発生した当日午前。定例の記者会見に臨んだ加藤勝信官房長官は、東証の終日取引停止について記者から問われると、その想定問答がないために「ええと、ちょっと、その情報は確認していないので」などと、しどろもどろの答弁を迫られた。
そうして東証が政官との密なコミュニケーションを怠り、政府のナンバー2に恥をかかせたことの代償は大きかった。
宮原氏は最終的に引責辞任を迫られることになり、その2か月後に発表したTOPIXの見直し案は、改革とはほど遠い内容になってしまったのだ。
「JPX経営陣の覚悟のなさ」という指摘も
一方で、まったく別の見方もある。日本取引所グループ(JPX)の関係者の1人は、改革が骨抜きになった要因について「JPX経営陣の覚悟のなさだ」と指摘する。
たしかに政府や金融庁の姿勢がどうであれ、改革の方針を最終的に決断するのは東証であり、その親会社のJPXだ。
JPXの清田瞭CEOは、最上位となるプライム市場の上場維持基準について、「どの金額で切ったとしても、それぞれの立場で批判が出る。批判のない仕切り線(基準)はなかった」と、週刊東洋経済のインタビューで語っている。
そこは清田氏の言うとおりかもしれないが、政官や経済界との利害調整の中で、大きな現状変更を伴わず、最も批判が少ない緩い基準にしたのは、紛れもない事実だ。
清田氏をはじめJPXの経営陣が、「金融庁をうまく巻き込みながら、批判を受け止める盾になり、改革実現に向けて1点突破しようと思えばできたはずだ」(同JPX関係者)という声は、市場関係者の間で根強くある。