意味あった?東証市場改革「完全骨抜き」の全内幕 1部上場の84%が横滑り、海外マネー流出の危機
そもそも東証1部を巡っては、かねて玉石混交という批判が渦巻いている。時価総額が30兆円を超える企業から、同10億円台の企業までが入り乱れ、規模やガバナンス(統治)の程度があまりにもかけ離れている状態だからだ。
その状況で改革議論の出発点にあったのは、上場をゴールとせず、持続的な企業価値向上にむけてどう動機付けを図り、その一環として最上位市場の構成企業をどう厳選していくか、ということだった。
にもかかわらず、なぜ東証改革はほぼ現状維持のような内容に終わってしまったのか。その要因は大きく2つに分けられる。
プライムの時価総額基準が証券会社に漏洩
1つ目は、東証が改革議論の主導権を失ったことだ。東証は2018年に有識者を集めた懇談会を設置し、市場構造改革に向けた議論を内部で始めている。その過程でプライムにおける具体的な時価総額の基準が、懇談会のメンバーを通じて証券会社に漏洩する事態が起きてしまったのだ。
その情報を、われ先にと投資家に拡散させた野村証券に対しては、金融庁が行政処分を下す事態にまで発展。そのことで、改革議論は金融庁が「引き取ることになった」(金融庁幹部)という。
舞台が金融庁に移ったことで、公正中立な議論の下、改革は一気に加速するかに思われたが、実態は違った。
金融審議会で議論を始めた2019年5月以降、冒頭にあったような圧力を、与党議員たちが金融庁に折に触れてかけ始めたのだ。
中でも圧力が「強烈だったのは当時官房長官だった菅(義偉)さんであり、経済産業省出身の官邸官僚たちだった」と、金融庁の関係者は声を潜めながら話す。議員たちにとってみれば、一民間企業よりも日常的にやり取りする官庁のほうが、“口利き”しやすかったのだろう。
その圧力に金融庁があらがえるはずもなかった。当初、地方の企業が1部上場というブランドにこだわるのであれば、1部、2部を残したままで、その上位に優良企業に厳選した市場をつくるという案もあったが、幻のごとくすぐに立ち消えになっている。