東証改革でも「ゾンビ企業」が半数残留の不可解 上場企業約3700社の6割が東証1部に集中
昨年末、東京証券取引所は2022年上半期をメドに現在の4市場を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編する方針を決めた。現在の1部市場にあたるプライム市場の新規上場基準は100億円。TOPIX(東証株価指数)についても、算出対象を1部市場の全銘柄から変更し、新指数に切り替える。
今回の改革で最も注目されていたのは、プライム市場の上場基準だ。「日本企業のトップリーグ」たる1部銘柄のブランド価値は国内では依然高く、上場企業からは剥奪されるのを危惧する声も多く聞こえる。現在の1部銘柄は2161社(2019年12月末時点)中、半数近くがPBR(株価純資産倍率)1倍以下で今すぐ会社を解散しても投資価値に見合わない業績不振の状態にある。こうした「脱落予備軍」の企業は必死で東証改革の成り行きを見守っていたというわけだ。
さらにプライム市場から降格すれば、TOPIXに連動して資金を運用する年金や海外投資家などからの資金が入らず、株価の下落につながる。そのため空売りを狙う証券会社も東証の改革に高い関心を抱いていた。
金融庁によると、現在の1部市場のうち、数百社は新基準に届かないという。今回の新規上場基準の100億円については単純計算で1部銘柄の半分を占める「ゾンビ企業」のうち、半数近くは残留するため「上場企業に配慮した東証が日和った」という見方も多い。
企業は東証1部のブランド力に固執する
東証がこの新基準を提示した背景について、あるネット証券のストラテジストは「東証の真の狙いは、『企業側に東証1部のブランドはあげるけれども、TOPIXに入れるかはわからない』という2段構えを意味している」と匿名を条件にもらす。
そもそも東証の市場区分を含む改革は、TOPIXが1部市場の全銘柄を対象としていると運用の手間がかかりすぎるという運用サイドからの注文から始まった。そういう実利の部分とブランドとしての1部銘柄の議論を分けて進めればよかったのだが、東証側に「TOPIXは1部の全銘柄で算出する」との固定観念があり、こじれてきたのだ。
「誰だって、企業名は知らなくても『東証1部』といえばすごいと思う。人材のリクルートや融資の受けやすさなど、格段の違いがあるため、企業側としては絶対に手放したくない」(前述のストラテジスト)
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