東証改革でも「ゾンビ企業」が半数残留の不可解 上場企業約3700社の6割が東証1部に集中

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一方、証券業界側からすれば「1部降格=TOPIXから外れる」という話はビジネスチャンスに直結する。昨年には東証改革をめぐる議論が、野村証券の情報漏洩問題の原因にもつながった。東証がプライム市場の算出基準をこれまでの発行済み株式総数に株価を乗じた時価総額から、市場で売買できる株式数に株価を乗じた「流通時価総額」と新基準を持ち出したのも、「明確な基準をギリギリまで明らかにしない」という戦略があるからだ。

東証としては、TOPIXの企業数を数百社規模にしたい狙いがある。今回の改革は東証がここで「絞り込む厳しさ」を見せられるかどうかにかかっていると言ってもいい。

中国と意地の張合いで、時価総額を競う

ところで、なぜ東証1部上場企業の数がここまで膨らんだのか。日本取引所グループ上場約3700社の約6割は東証1部市場に集まっているうえ、先述のように業績不振の企業が1部銘柄の半分を占める。このようないびつな状況は、日本取引所グループの前CEOだった斉藤惇氏(現KKRジャパン KKR Global Institute シニアフェロー)が2012年に断行した上場基準の緩和が原因にあった。

斉藤氏は、直接1部市場に新規上場する規準について、時価総額500億円から250億円に引き下げ、マザーズ経由で昇格する場合は40億円以上とするなどの「1部ブランドダンピング」を行った。

 背景には当時、日本取引所グループが中国・上海市場と時価総額で激しく競っていたことがある。上海市場は中国の経済成長を背景にみるみるうちに時価総額を拡大し、2014年には日本を抜いて世界2位に君臨。当時の日本側の焦りは相当なもので、斉藤氏はなんとか追いつこうと、上場基準を下げて時価総額自体を増やしていった。

これには、東証サイドにも上場銘柄が増えて手数料が入り、証券会社もIPO(新規上場)ビジネスで儲かるというメリットもあった。野村証券出身の斉藤氏らしい改善案で、結果として2018年以降は中国経済の成長鈍化により日本が追い抜いたが、当然反動も出てきた。

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