全日空は景気回復、JALからの旅客シフト、首都圏空港拡張による需要増とコスト削減で収益性向上の見込み《ムーディーズの業界分析》
AVP-アナリスト 澤村美奈
ムーディーズは、全日本空輸(以下、ANA、ポジティブ)にBa2格付けを付与しているが、これは国内航空市場における確立された地位により、同社が低水準ながらも比較的安定した収益を上げてきたことを反映している。
ANAは機体再編のため過去数年にわたり先行投資を行ってきており、格付け水準に対してバランスシートが比較的脆弱である。しかし、同社のバランスシートは需要の増加とコスト削減の実施により回復していく、とムーディーズは見ている。また、首都圏空港が拡張されたことにより、路線や運航時間の柔軟な設定が可能になり、効率性と収益性の向上が見込まれている。
ANAの無担保シニア債務格付けBa2には、航空機への制度融資の仕組み上発生する担保付き債務に対する劣後性が考慮されている。また、同社は三井住友銀行やみずほコーポレート銀行をはじめとした主要取引金融機関と良好な関係を維持しており、2010年3月時点での上述の2行と三菱東京UFJ銀行および住友信託銀行からの借入金が、社債を含む借入金総額(単体ベース)に占める割合は3割程度である。
加えて、同社が日本の主導的なエアラインであること、資本構成と業績から見て収益を継続的に上げていく体質を維持していることから、日本特有のサポートシステムとして2 ノッチ程度が考慮されている。
同社の無担保シニア債務格付けBa2は、上述のサポートシステムによる2ノッチ程度のノッチアップと、担保付き債務に対する劣後性による1ノッチのノッチダウンが考慮された結果である。