全日空は景気回復、JALからの旅客シフト、首都圏空港拡張による需要増とコスト削減で収益性向上の見込み《ムーディーズの業界分析》
ノッチングの検討
ANAの無担保シニア債務格付けは、同社のファンダメンタルな信用力評価から1ノッチ引き下げられている。これは、同社の債務全体に占める担保付き債務の割合を反映したものである。同社は、航空機の購入に際し、政府系金融機関からの低金利の航空機制度融資を利用している。制度上、航空機を担保として供する仕組みになっており、結果的として、デフォルト時に無担保債権者は担保債権者に対し劣後するため、無担保シニア債務格付けは1 ノッチ引き下げられている。
同業他社との比較
ANAを含む日本の航空会社は、航空機燃料税や空港使用料などの高い公租公課を負担しているため、ANAの収益性は世界の競合他社と比較して低い水準にある。この高い公租公課により、国内市場において競争環境が安定していることも同社の格付けには反映されている。
たとえば、EBITDAマージンで見ると、ANAの14%(10年9月末)に対し、Air New Zealand (ニュージーランド航空、ベースライン信用リスク評価: Ba1)は18%を上回る水準(10年6月末)である。一方、Lufthansa (ルフトハンザ・ドイツ航空、同Ba1)は11%程度(10年9月末)と、ANAより少し低い水準にある。
また、首都圏空港の拡張に当たり、ANA は機体の再編のため積極的に設備投資を行ってきており、財務レバレッジは高い水準にある。たとえば、同社の有利子負債対キャピタリゼーション比率は約77%だが、ニュージーランド航空は約54%、ルフトハンザ・ドイツ航空は67%である。一方、有利子負債対EBITDA倍率は、ANAが約8.2倍、ニュージーランド航空は約3倍、ルフトハンザ・ドイツ航空は約5倍である。ANAの近年の増資を考慮しても、同社の財務レバレッジは同業他社と比較して高い水準にある。ムーディーズは、この先行投資によりANAの財務柔軟性は制限されているが、中期的には効率的な運航が可能になり、収益力は改善され、財務レバレッジも徐々に改善していくものと考えている。
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