全日空は景気回復、JALからの旅客シフト、首都圏空港拡張による需要増とコスト削減で収益性向上の見込み《ムーディーズの業界分析》

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高い財務レバレッジと流動性

機体再編のための先行投資により、ANAの財務レバレッジは、世界の同業他社と比較して依然として高い水準にある。09年の増資後も同社の資本構造は依然として弱いが、調整後有利子負債対キャピタリゼーション比率は、09年3月末の約83%から10年9月末の約77%まで改善した。同社の総有利子負債対EBITDA倍率は、収益力の回復により10年3月末の15倍からは改善してきているものの、10年9月末で8.2倍と高い水準にある。キャッシュフローの強化により同社のバランスシートは改善され、同社の財務内容は徐々に強化される、とムーディーズは考えている。

ANAは、向こう1年間の債務履行、配当、運転資本、設備投資に対応できるだけの十分な流動性を保有している。ANAは10年9月末時点で約580億円の現金及び現金同等物、約2700億円の市場流動性の高い有価証券、および1000億円のコミットメントライン(銀行融資枠)を有している。

同社は11年3月期の営業キャッシュフローを約1700億円と予想している。一方、10年9月末時点の短期債務は約1950億円であり、同社の11年3月期の設備投資計画は約2300億円である。また、ANAは主要取引銀行とも安定的な関係を維持している。

格付けの見通し

格付けの見通しは「ポジティブ」である。この見通しは、需要の増加とコスト削減の実施により、ANA の業績と財務レバレッジは回復していく、とのムーディーズの見方を反映している。また、ANA が国際旅客事業よりも変動性の低い国内市場で市場地位を強化し、これを継続し、結果として同社の業績も安定化していく、とムーディーズは見ている。

将来の格上げ・格下げにつながる要因

格上げには、財務レバレッジの改善が必要となる。さらなる合理化とコスト削減、空港拡張により営業収入が増加することで、収益とキャッシュフローが強化され、財務レバレッジの改善が進んだ場合、格付けには上方の圧力がかかる。たとえば、調整後有利子負債対キャピタリゼーション比率が70%に近づき、調整後有利子負債対EBITDA倍率が5.0 倍を下回る場合などである。

競争環境が悪化、あるいはANA の業績が悪化した場合、または財務レバレッジの改善が進捗しない場合、格付けには下方の圧力がかかる。たとえば、EBITDA マージンが今後1 年半から2 年の間、12%を下回り、調整後有利子負債対キャピタリゼーション比率が80%水準にとどまり、調整後有利子負債対EBITDA 倍率が7.0 倍を継続的に超える状態が続く場合などである。今後、以下のセクションで述べているサポートシステムが弱まるような場合も、格付けは下方の圧力を受ける。

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