製造部門が「営業」の目標にムカつく納得の理由 組織間の摩擦を解決するにはどうしたらいいか

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もう1つは営業部門の評価を、売上予算に対する達成率ではなく、計画精度にするという案です。おそらく多くの企業において、予算達成率98%の営業部よりも、130%の営業部の方が高く評価されているはずです。この評価の仕方の場合、販売計画の精度よりも“とにかく売る”方が合理的であり、生産量は多ければ多いほど安心、ということになります。

しかし計画精度で評価されるとなると、そもそもの計画をより精緻に立案することも重要になり、結果、先述のモラルハザード問題が解決されやすくなると考えます。実際、ある大手自動車メーカーでは計画精度がKPIになっているそうです。

予測精度の向上を一緒に目指す

私が事業部門で需要予測を担っていた際は、営業・マーケティング部門と同じ組織であったため、同じ利益目標を持っていました。不要な在庫は管理コストによって利益を減らすため、販売計画の精度を営業・マーケティング部門と共有しつつ、共に改善を目指していました。サービスレベルと予測精度の向上を一緒に目指すことで、営業部門との情報連携もよりスムーズになります。

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プリンシパルとエージェントのインセンティブ、つまりKPIを統一することも有効な一案だと言えるでしょう。しかし、現実のビジネスではこういったアイデアを実現するのは簡単ではないことも承知しています。

複数の部門に所属する人の評価のしくみや、レポートラインの整備などはまだあまり進んでいないと感じています。一部のグローバルトップ企業では計画精度による評価も導入されていますが、企業が置かれた環境や成長段階によっては達成率での評価が有効な場合もあると思います。

よって私がここで言いたいのは、経営理論は現実のビジネスの問題解決を考える際の有効な軸になる一方、それぞれの企業の文脈に合わせて具体的にアレンジする必要があるということです。

ここで紹介したエージェンシー理論は、株主と社長、経営層と従業員、上司と部下など、さまざまな関係に適合し、各種問題を整理することができます。ぜひ、みなさんの頭を悩ませている組織的な問題に当てはめ、モニタリングのしくみや共通インセンティブの設計を検討してみてください。

山口 雄大 コンサルティングファーム需要予測アドバイザー

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やまぐち ゆうだい / Yudai Yamaguchi

東京工業大学生命理工学部卒業。同大学大学院社会理工学研究科修了。同大学大学院イノベーションマネジメント研究科ストラテジックSCMコース修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修了。化粧品メーカーで10年以上にわたり、さまざまなブランドの需要予測を担当。日本事業へ異動した後はS&OPグループマネジャーとして需要予測をベースとしたS&OPプロセスを設計。Journal of Business Forecasting(IBF)や経営情報学会などで需要予測の論文を発表。JILS「SCMとマーケティングを結ぶ!需要予測の基本」講座講師。著書に『新版 この1冊ですべてわかる 需要予測の基本』『すごい需要予測』など。

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