製造部門が「営業」の目標にムカつく納得の理由 組織間の摩擦を解決するにはどうしたらいいか
一方で営業部門は、商談で納品を決めるため、自分たちの意思だけで商品別の販売計画を確約することができません。市場のニーズの変化や取引先の要望も踏まえ、随時変更していく必要があるのです。そのため営業部門は、製造部門の融通のきかなさにフラストレーションを抱えていることがあります。
エージェンシー理論をご存じですか? 意思決定の主体であるプリンシパルとその代理実行者であるエージェントという2者の関係性において、
・情報の非対称性(エージェントの持つすべての情報をプリンシパルが把握できていない)
・目標の不一致(両者で目指すところが異なる)
ーーがある場合、エージェントがプリンシパルの意図とは異なる行動を取るようになるという、モラルハザードのメカニズムを説明するものです。
これは感情的な行動ではなく、合理的な行動の結果起こると説明されます。このエージェンシー理論を使って、先述の需給調整における問題を読み解いていきましょう。
営業と製造の思惑がズレる訳
これから挙げる例は少し極端なものになりますが、わかりやすく読み解くためとご理解ください。また、今回紹介する仮説は扱う商品数が少なくとも数千、数万以上あるメーカーを対象としており、商品数が少ない企業は想定していません。
まずはプリンシパルとエージェントの関係を需給調整の役割分担に当てはめてみます。
企業の成長戦略を描く、具体的には売上高や営業利益の拡大を目指す経営層に対し、それを販売サイドのオペレーションとして実行する営業部門と、生産サイドのオペレーションとして実行する製造部門という関係を前提とします。
営業部門には売上目標(予算)があることが多く、製造部門には在庫目標(または回転率)があることが多いと言えます。この時、プリンシパルを製造部門、エージェントを営業部門と考えます。
冒頭のケースのように、営業部門は売上予算を達成するというミッションがあるため、品切れはできるだけ避けたいと思っています。よって、生産計画を高くしたいと思い、製造部門へ連携する販売計画をあえて高くする人(グループ、支店など)がいます。一方、客観的な根拠に基づき、低めの販売計画を連携する人もいます。
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