「ウィル・スミス平手打ち」擁護に見る日米の差 妻の外見へのジョークに対する暴力は愛の証か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
アカデミー賞受賞式でクリス・ロックを平手打ちしたウィル・スミス(写真:Nicole Sperling And Julia Jacobs/The New York Times)

アカデミー賞授賞式の壇上での平手打ち。

ウィル・スミスの行動が議論を呼んでいる。日本ではスミスを擁護する意見が強いようだが、アメリカではスミスに対する批判が圧倒的だ。暴力をふるったスミスを会場から追い出さず、主演男優賞受賞者として舞台に上がることを許したうえ、6分ものスピーチ時間を与えた主催者への非難も強い。

すでにほとんどの方はご存じだと思うが、きっかけは、長編ドキュメンタリー部門のプレゼンターとして舞台に立ったコメディアンのクリス・ロックが、最前列に座っているスミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスに「『G.I.ジェーン』の続編を楽しみにしているよ」とジョークを言ったこと(脱毛症のため、彼女の髪は『G.I. ジェーン』の主人公のように非常に短い)。

【2020年4月4日13時50分追記】初出時、固有名詞に誤りがありましたので修正しました。

これを聞いて、最初、スミスは笑ったのだが、妻が苦い表情をしていることに気づくと、立ち上がってロックに歩み寄り、平手打ちを食わせたのだ。それからまもなく主演男優賞を受賞して再び舞台に上がった時、スミスはスピーチの中で、先ほどの行動は愛から来たものだったと述べた。

外見へのジョークでも許容されるワケ

日本では、他人の外見、とりわけ病気による外見をジョークのネタにしたロックへの怒りが強いように見受けられる。だが、アメリカではそこへの抵抗は薄い。コメディアンらは一斉にロックへの支持を表明したし、この出来事の後、ロックのショーのチケットの値段が高騰したことを見れば、一般人の多くもロックの味方であることがうかがえる。

なぜなのか。ロックが言ったジョークは、悪趣味かもしれない。しかし、強者が弱者を笑うものではないからだ。もしロックが白人だったなら、彼は大バッシングを受け、しばらく仕事を干されることになったはずである。アメリカではここのところがとても重要だ。

黒人が白人をからかうジョークは問題ないが、逆は絶対にだめ。ストレートがLGBTQをネタにするのもトラブルの元。スタンダップコメディアンのデイブ・シャペルは、最近それで問題になったばかりだ。

次ページ思い切りネタにしてもいい人とは
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事