ふとんの西川、混沌の「睡眠市場」で勝ち残る算段 ただの寝具では競争できない市場変化に危機感
従来の寝具流通は、百貨店や家具店を中心とし、商店街に店を構えるような地場の寝具専門店にも、製品を卸す構造となっている。中でも百貨店では、西川のような老舗の特定のメーカーが長い間売り場を確保し、優位な環境を享受してきた。健康志向の高まりや、バブル景気も重なり、1994年には同社の羽毛布団の販売数は919万2000枚と、ピークに達した。
ところが近年はイトーヨーカドーやイオン、ニトリ、無印良品など大手小売店が続々と低価格のPB(プライベートブランド)の寝具を発売。百貨店や昔ながらの専門店はこれらに客を取られ、毛布やベッドパッドといったボリュームゾーンの市場で競争が激化した。ある業界関係者は「一時期は売り場の面を確保するのがゴールだったが、そうではなくなっている」と漏らす。
2019年に3社を1つに合併
西川はもともと1つの会社だったが、第2次世界大戦中に会社の存続を模索し、東京・大阪・京都の各支店を株式会社として独立させた経緯がある。しかし、こうした市場の変化に対応するため、2019年2月にこれら3社の合併を断行した。
これまで3社間では値引き競争といったブランド毀損につながるようなこともあったが、合併したことで、こうした競争もなくなり、価格帯の統一を図ることもできた。15代目当主で社長の西川八一行氏は「『とにかく生活者のために』を原点にすると、各社の特許や、流通網など、隠れていた価値を掘り出すことができた」と振り返る。
とはいえ市場の変化に対応するためには、よりいっそうの改革が必要そうだ。西川の直近の業績をみると、エアーのような採算のよい高付加価値製品を強化したことで、2021年5月期の営業利益は1億3400万円に黒字転換した(前期は2億7900万円の赤字)ものの、売上高は567億円で、前年同期比で11.33%減少した。ここから中期的な売上高目標である1000億円を達成するためには、さまざまな策を打つ必要がある。
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