中国電力大手、火力発電「採算割れ」で8割減益 華潤電力、燃料高騰により石炭火力が大赤字に

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華潤電力は保有する発電設備容量の7割近くを火力発電が占め、再生可能エネルギー発電の拡大を急いでいる。写真は同社の河北省の石炭火力発電所(華潤電力のウェブサイトより)

石炭など燃料価格の高騰で、中国の電力会社がコストアップに苦しんでいる。国有電力大手の華潤電力(チャイナ・リソーシズ・パワー)が3月16日に発表した2021年の決算報告によれば、売上高は898億香港ドル(約1兆3559億円)と前年比29%の増収を確保したが、純利益は15億9000万香港ドル(約239億円)と前年より8割も減少した。

その主因は火力発電事業の大幅な採算割れだ。同事業の2021年の営業損失は59億4000万香港ドル(約897億円)に上り、前年の41億8200万香港ドル(約631億円)の黒字から巨額の赤字に転落した。

背景には、中国国内での石炭価格の高騰がある。華潤電力の決算報告書によれば、同社傘下の石炭火力発電所の燃料コストは、2021年は1キロワットアワー当たり0.3058元(約5.7円)と前年より6割も上昇した。

中国の石炭市場では、1キログラム当たりの発熱量が5500キロカロリーの発電用石炭の取引価格が、2021年10月中旬に1トン当たり2600元(約4万8000円)の史上最高値をつけた。その後、石炭相場は(中国政府の価格介入などにより)下落に転じ、2021年末には793元(約1万4700円)まで下がったが、多くの石炭火力発電所ではそれでも収支はマイナスだ。

設備投資を再生可能エネルギーに集中

火力発電事業の苦況とは対照的に、華潤電力の再生可能エネルギー事業は2021年に大きく飛躍。同部門の営業利益は83億8000万香港ドル(約1265億2700万円)と、前年比85.3%の大幅増益を達成した。

2021年12月末時点で、華潤電力は全社で6046万5000キロワットの発電設備容量を持ち、そのうち火力発電が67.8%となお過半を占めている。風力、太陽光、水力などの再生可能エネルギー発電の比率は32.2%と、前年より6.3ポイント上昇した。

華潤電力は第14次5カ年計画(2021~2025年)の期間中に再生可能エネルギーによる発電設備容量を4000万キロワット増設し、全社に占める比率を50%超に引き上げる目標を掲げている。これを達成するためには、今後4年間で再生可能エネルギー発電の比率を最低でも17.8ポイント積み増す必要がある。

本記事は「財新」の提供記事です

それだけに、華潤電力にとって再生可能エネルギー事業の拡大は極めて重要だ。同社は2022年に前年比4割増の376億香港ドル(約5677億1100万円)の設備投資を予定しているが、そのうち8割を風力発電所と太陽光発電所の建設に振り向ける計画だ。

(財新記者:陳雪婉)
※原文の配信は3月17日

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