学校基本調査によると、特別支援学級に在籍する児童生徒数は、2010年の14万人に対して、2020年は2倍の30万人に増えている。その中でも、一部の発達障害が含まれる「自閉症・情緒障害」の児童生徒数は、10年間で2.7倍にまで増えている(下図)。
障害のある児童が通常の学級で共に学ぶ「インクルーシブ(包摂)教育」は、世界的な潮流となっている。日本は2001年、障害の種類によって盲・ろう・養護学校や特殊学級に振り分けられていた「特殊教育」を「特別支援教育」に転換。従来の障害に加えて特別支援教育の対象になったのが、発達障害だった。
こうした状況について、障害児の教育史に詳しい東京大学大学院教育学研究科の小国喜弘教授は次のように指摘する。
「2014年に日本が批准した障害者権利条約は、障害のあるなしに関わらず、地域の学校で共に学ぶことをうたっている。こうしたインクルーシブ教育への転換が迫られているにもかかわらず、特別支援学級は事実上の分離教育となっている」
診断やレッテル貼りを促す意図はない
文科省は今年再び、発達障害の可能性のある児童の調査(通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査)を実施している。20年前とほぼ同様の調査項目に基づく教師への調査で、2012年に続き3回目だ。その結果は今年の冬に発表される。
文科省の特別支援教育課の担当者は、調査の目的について次のように話す。
「調査は教師に対して、困っている子どもの存在に気づいてもらうための調査だ。診断やレッテル貼りを促す意図はない。そのため、調査の名前に『発達障害』と入れるかどうかは議論する」
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