ついに2001年、文科省は動いた。「21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の最終報告で、「通常の学級の特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応することが必要」とし、発達障害の全国的な調査を行うことを提言した。
こうして2002年、「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」によって初めて発達障害の実態調査が行われ、その支援の必要性が示された。調査から2年後、2004年に発達障害の早期発見と支援を促す「発達障害者支援法」が成立。2006年には発達障害は通級指導の対象となった。「調査が政策の骨になった」と、上野氏は調査の意義を強調する。
しかし調査から20年経った現在、発達障害とされる子どもは急激に増加した。調査は教師が児童の言動を評価するものだったが、その調査結果がクラスでの在籍率や有病率を示すように、学校現場に広がっていったことが一因だ(詳細は連載第5回記事)。
教員の子どもを見る目が変わった
障害のある子どもの就学や学校での悩みについて相談を受ける「障害児を普通学校へ 全国連絡会」の片桐健司教諭は、2000年代初頭を振り返り、「この頃、発達障害の相談が増えた」と語る。
「発達障害が話題になって、教員の子どもを見る目が変わり始めた。『手がかかる』で済んでいた子どもが、何かあるとすぐ発達障害と思われるようになった。発達障害で教育相談や医者に行きなさいと言われたと、泣きながら相談に来る親がいた。医者に相談すると何かしらの診断名がついてしまう」(片桐教諭)
特別支援教育に詳しい一部の専門家は、発達障害を早期発見した場合でも、「通常の学級での指導や支援が工夫されないまま、安易に特別支援学級への転籍が検討されるケースがある」と指摘している。
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