本当はトモダチなんて1人もいなくていい

平川克美×小田嶋隆「復路の哲学」対談(3)

小田嶋:実は僕は、よく言われる「草食系」の話と、今日の「大人がいなくなった」話って、同じ文脈なんじゃないかという気がします。草食系って、「今どきの若い男は性欲が弱くて、女の子とのセックスに興味を持たない」という文脈で語られるけど、僕はたぶんその説明は嘘だと思うんです。今の若い男だって、女の子とのセックスには十分興味がある。でも、優先順位が変わった。

つまり今の若い人にとって、「彼女を作る」「モテる」「セックスする」ということは優先順位の1位じゃなくなっているのだと思うんです。彼らがいちばん大切にしているのは、「仲間がいる」ということになった。その結果、彼女を作ったり、セックスをしたりすることの順位が下がっちゃったんじゃないかと。

平川:なるほど。確かに「仲間」「友達」というものの価値は、僕らが若い頃よりもずいぶん高まっているように感じますね。

友達なんて、1人もいなくても大丈夫

小田嶋:たぶん、週刊少年ジャンプが「友情・努力・勝利」という3つの掛け声でマンガを作り、それが子どもたちに支持されてきたこととも無関係ではないと思うんですが、彼らは仲間を失うことを過剰に恐れているのです。そしてその傾向というのは、スマートフォンや、LINEなどのSNSが広まったことでさらに加速されているように思います。

携帯とかスマホが普及したことで何が変わったかというと、友人関係、仲間関係がやたらと継続されるようになったということです。それまでは、学校を卒業するとか、職場を変わるというだけで、それまでの友人関係や仲間関係というのは、案外ブツッと切れてしまうものだったんです。

たとえば中学校に入ると、相当仲が良かった相手でも、小学校時代の同級生とは遊ばなくなる。中学を卒業して高校の友達と遊び始めると、中学校のときの友人とはそれっきり40年会ってない、というのもざらにあった。それは薄情だとか、いい悪いの問題じゃなくて、そもそも友達って、そういうものですよ。どれほど仲のいい親友だろうと仲間だろうと、数年ごとに関係性がリセットされるのが普通なんです。

ところがSNSや携帯が普及してしまうと、そういうわけにはいかなくなる。いったんつながると切れない。別にそこまで仲がいいわけでもないのに、友達や仲間のリストがどんどん長大になっていく。でもね、本当は友人なんて1人もいなくても大丈夫なんですよ。

平川:そうですよ。小田嶋さん、いないもんね(笑)。

小田嶋:いないですね(笑)。まあ、まったくいないのもどうかと思うけれど、「友達をあてにしない」って、人が生きていくうえですごく大事なことだと思う。今はけっこう、当たり前のように友達や、仲間をあてにして生きている人が増えている気がします。

平川:いや、今のお話は非常におもしろいと思う。仲間がほしいというのは、裏を返せば「自分1人で責任を負いたくない」ということだよね。大人じゃないからこそ、仲間や友達が必要なんですよ。「最後の責任は私がとる」「一同を代表して私が謝る」っていうのが大人ですからね。

もちろん、仲間や友情というのは大切ですよ。でもそれは、友情を確認しあったり、責任を押し付け合ったりすることじゃないはずです。『昭和残侠伝』での高倉健と池部良なんて、「この人のために一緒に死ぬ」というぐらいの友情を結んだ2人なのに、2人で一緒に酒を飲むことすらしないぐらいですからね。

(写真:安部俊太郎)

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