若年者就業の経済学 太田聰一著 ~高度な人的資本による成長産業の育成が重要に

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若年者就業の経済学 太田聰一著 ~高度な人的資本による成長産業の育成が重要に

評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト

 若年雇用問題というと、フリーターやニートを扱った社会学や教育学からの視点のものが多いが、本書は経済学の視点から包括的にわかりやすく論じたものである。

新規採用で大企業が新卒を重視してきたことはよく知られている。自社独自のスキルを身に付けさせるべく、設備投資と同様、人材投資という観点から多額のコストをかけ行ってきた。しかし、長期の不況で成長期待が低下し、新卒採用を大きく絞っている。これが、若年雇用が深刻化した原因の一つである。グローバル化が進み日本経済が大きく変容する中で、大企業への入職経路は、間口が狭くなっただけでほとんど変わっていないことに驚かされる。

中高年が多い企業では若年採用が抑制されること、特に労働組合の強い企業でその傾向があることは、予想されていた。本書でも中高年の就業率上昇が、若年の就業率低下と結びついていることが示されている。

それでは、望んだ就業が可能とならなかった若年はどのような就業人生を歩んでいるのか。不況期に学校を卒業した人は、好況期に卒業した人に比べ賃金や就業のチャンスがその後も少なくなることや、非正規就業の確率が高くなることが示される。不本意な就業を余儀なくされ、その後の離職率も高い。かつては、努力が何より大事と考える人が多かったが、今では努力より運やコネと考える人が増えている。自分ではコントロール不能な景気によって、就業人生の成否が大きく左右されている事実が、人々の思考に大きく影響しているのであろう。

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