若年者就業の経済学 太田聰一著 ~高度な人的資本による成長産業の育成が重要に


 若年雇用が深刻な理由の一つには、学生の大企業志向も影響している。中小企業は、望んだほど新卒者を採用できていない。一方、大学進学率の上昇で学生の資質が低下したと考え、大企業は有力大学卒への需要を高める。労働市場に大きなミスマッチが発生している。

市場がうまく機能しないのなら、政府が介入する余地が多少はあるかもしれない。本書では、マッチング向上のための施策や教育訓練強化を通じた若年の資質向上策が慎重に論じられている。日本ではこれまで、物的な資本蓄積を促す政策ばかりが重視されてきたが、現代社会においてより高い収益を生み出すのは、物的資本ではなく人的資本である。資本集約的産業が成長産業であるというのは、20世紀の工業時代の発想で、むしろ21世紀の知識経済においては、高度な人的資本を有した労働集約的産業が成長産業となる。評者は、政府介入を極力避けるべきという立場だが、人的資本の蓄積を促す政策に軸足を移すことは望ましいと考える。

おおた・そういち
慶應義塾大学経済学部教授。1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス博士課程修了、Ph.D.。名古屋大学経済学部助手、講師、助教授、名古屋大学大学院経済学研究科教授を経る。

日本経済新聞出版社 2520円 300ページ

  

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