8割の売り上げで利益が出る体質に
──3~5月期の営業利益は60億円の赤字でした。見たこともないような数字でしたが、底は脱したのでしょうか。
いや、脱していない。飲食業のコスト構造は厳しくて、コロナ前の売り上げの80%後半が損益分岐点。そこまで持ち直して、やっと損益トントンだ。
当社は東京、千葉、埼玉、神奈川で550店展開し、全店の過半数が1都3県に集中している。東京だけで約220店あり、東京が回復しないと話にならない。利益を戻すのはそう簡単な話ではない。
──実際に店舗を訪れると、客足はだいぶ回復してきたようにも見えますが、6月の売上高は前年比66%と厳しい状況でした。
1つは営業時間。従業員の安全を第一に考えて、今はすべての店舗で22時までに閉店している。営業時間を以前の86%に短縮しているので、同じような来客数でも売り上げは86%になる。
もう1つは席数の間引きだ。緊急事態宣言中はテーブルを1つおきに使って、稼働する席数を半分くらいに抑えていた。徐々に戻しているが、現在でも81%の席しか稼働していない。8割台まで来たが、3密が発生してはいけないので、これ以上慌てて戻すことはできない。
──この状況はいつまで続きますか。
深夜営業はできれば再開したくない。本当は22時で終わりたいと前から思っていた。深夜は治安が悪いし、当社は22時までの営業で利益が出る体質を作ってきた。
損益分岐点を下げて、80%の売り上げでも利益が出る体質を目指す。「8割で利益を出す」目標から逆算して、すべての戦略を見直している。コロナをきっかけに、今まで変えられなかったことも聖域なく全部変えていく。
──改革の象徴の1つが、ミラノ風ドリアの「1円値上げ」などの価格改定ですね。
価格改定の効果は思った以上にあって、面白いし、びっくりしている。
最大の意図は、コインの受け渡しを削減することにあった。コロナ禍によって、顧客も従業員もコインのやり取りをなるべく避けたい。すべての商品の価格を50円単位にすることでコインの受け渡しを6~8割減らせると想定し、実際にその通りになった。
会計にかかる総時間も30%減少した。ぴったり払いやすい金額になったことで、釣り銭を渡す時間が減った。自分が食べた分の金額が500円、600円などとキリのいい金額なので、レジに来る前にグループでまとめてくれることも多くなった。価格改定で個別会計は25%減少した。
──予想以上の効果ですね。
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