「ベンチャーは少しの判断の遅れで“死ぬ"時代に」 LayerX 福島良典CEO

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
拡大
縮小
LayerXの福島良典CEOが日本のデジタルトランスフォーメーションの課題について語った。写真は2019年(撮影:ヒダキトモコ)

特集「アフターコロナの岐路」の他の記事を読む

新型コロナウイルスの感染拡大を経てさまざまな産業が転換期を迎える中、どんな業界にも共通するトレンドが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」だ。その担い手として、ベンチャー企業が存在感を高めようとしている。
LayerX(レイヤーエックス)も、そんな企業の1つだ。5月にはジャフコ、ANRI、YJキャピタルなどのベンチャーキャピタル(VC)を引受先とし、総額約30億円の資金調達を実施。ブロックチェーン関連事業を祖業とする同社だが、今後はブロックチェーンに限らず、あらゆるテクノロジーを駆使したDX支援に踏み出す。
創業者の福島良典CEOは、ニュースアプリなどを運営するGunosy(グノシー)の創業や株式上場も経験した連続起業家。日本のDXの課題をどう解決するのか。また、激変するベンチャー市場をどう展望するのか。福島氏に聞いた。

技術を押し売りするだけではダメ

──創業時から長らく「ブロックチェーンの会社」というイメージの強かったレイヤーエックスですが、現在はもう少し広い範囲を担う「DXの会社」と打ち出しています。

会社として目指す方向や社会に提供したい価値は変わっていない。それは例えば、電子的なタイムスタンプの仕組みを使って証券取引をできるようにしたり、サプライチェーンのトレーサビリティを上げたりするなど、要は紙やハンコを使わずにデジタルなプロセスの中で証拠を残し業務を回せるようにすること。それがここ最近「DX」と呼ばれるようになった。

そこで僕たちも、ブロックチェーンという技術にこだわらずDXを進める会社になる、という意志表示をしたいと。ブロックチェーンは5年後、10年後に必ず普及する技術だと信じているけど、まだ先の話ではある。この半年で現実も見えてきた。「ブロックチェーンやりませんか」と提案しても、現状では正直、実証実験以外まったく進まない。技術を押し売りするだけでは、企業としても成り立たないと感じた。

重要になるのが、特に新型コロナを経て多くの企業が「待ったなし」と実感しているDXだ。単に目の前の稼ぎ口という意味合いだけではない。日本よりブロックチェーンの社会実装が進んでいるアメリカや中国では、その下地としてSaaS(Software as a Service)などデジタルのビジネスソリューションの普及がある。

──日本でもここが進まないと、ブロックチェーンどころではないわけですね。

レベルアップは段階的なものだと思う。ブロックチェーンが真価を発揮するのは、複数の企業間、産業間をまたぐやり取りだ。ただ正直、日本のデジタル化はもっと手前。まずはSaaSなどのソフトウェアを導入する。紙・ハンコを電子的なものに置き換える。これが目の前の課題で、「レベル1」。

次ページ「価値の流れ」のデジタル化
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
アフターコロナの岐路
アフターコロナの岐路
スペシャル・インタビュー
「これを乗り越えれば観光業の“勲章"になる」
星野リゾート 星野佳路代表
「われわれにとって、すべてがいい方向に動いている」
ワークマン 土屋哲雄専務
「自動車用鋼板のチャレンジに終わりはない」
東京製鉄 西本利一社長
「国内線を増やすなら今しかない」
ピーチ・アビエーション 森健明CEO
「ゼネコンの枠にとらわれず、ポートフォリオを変える」
大林組 蓮輪賢治社長
「大箱の超高層都市は終わり、自然との一体型へ変わる」
建築家 隈研吾
「GAFAはパートナー、中小企業のデジタル化を支援していく」
リコー 山下良則社長
「働き方を変えないと、生き残れない」
日立製作所 中畑英信 CHRO
「半導体のモノ売りからコト売りを広げていく」
ソニーセミコンダクタソリューションズ 染宮秀樹 執行役員
「『疑似資本』ローンで企業の再建を促したい」
横浜銀行 大矢恭好頭取
「地銀から『地域価値創造会社』に生まれ変わる」
山口フィナンシャルグループ 吉村猛会長兼CEO
「家を快適にすることにお金を使う人が増える」
LIXILグループ 瀬戸欣哉CEO
「小売業は“黄金の方程式"が通用しなくなる」
日本オムニチャネル協会 鈴木康弘会長
「回転ずしは続く。“空いた場所"を取りに行く」
スシローグローバルホールディングス 水留浩一社長
「国全体の『フレックス化』を考えよう」
工業デザイナー 水戸岡鋭治
「百貨店ならではのデジタル化の道筋がある」
エイチ・ツー・オー リテイリング 荒木直也社長
「ベンチャーは少しの判断の遅れで“死ぬ"時代に」
LayerX 福島良典CEO
「出版界が廃れる前に、合従連衡の心構えを」
紀伊國屋書店 高井昌史会長兼社長
「外食の値上げは許せないという意識を変えてほしい」
クージュー 松田公太 CEO
「コロナ後も対面営業の強みは変わらない」
明治安田生命 根岸秋男社長
「実店舗とオンラインの融合がテーマになる」
羽田未来総合研究所 大西洋社長
「インフラからプラットフォームに領域を広げる」
三菱UFJフィナンシャル・グループ 亀澤宏規社長
「多品種、多国籍が強みになる」
ミネベアミツミ 貝沼由久社長
「音楽は変わらない。楽しみ方は変わる」
ヤマハ 中田卓也社長
「ネット社会と付き合うリテラシーが求められる」
イー・ガーディアン 高谷康久社長
「世界をリードする技術革新力が必要だ」
東京エレクトロン 河合利樹社長
「生き残る配信事業者は3つ。そこに入りたい」
U-NEXT 堤天心社長
「コロナで『第5次産業革命』が起きる」
パソナグループ 南部靖之代表
「車の需要は多様化する。新たな収益源に挑戦していく」
ヤナセ 吉田多孝社長
「移動サービスで街を活性化させる」
Mellow 森口拓也代表
「ゲームはディズニーやネットフリックスより稼げる」
ネクソン オーウェン・マホニー社長
「ゲーム内コミュニテイはさらに広がる」
スクウェア・エニックス・ホールディングス 松田洋祐社長
「オールジャパンでワクチン開発を」
大阪大学 森下竜一教授
「科学に基づいた知見や製品を広めていく」
島津製作所 上田輝久社長
「今こそ宗教の多様性が求められている」
東大寺 狹川普文別当
「社内の“空気"が日本企業のM&Aを止めている」
GCA 渡辺章博社長
「商品数は半減、“演出"はどんどん増やす」
ゴールドウイン 渡辺貴生社長
「100円ショップでも100円にはこだわらない」
ワッツ 平岡史生社長
「在宅勤務で家計の負担は増え続ける」
CDエナジーダイレクト 山東要社長
「買収は積極的に仕掛ける」
カインズ 土屋裕雅会長
「量から質へ、自動車ビジネスは商売のやり方を変える」
旭化成 小堀秀毅社長
「中間管理職より“中間経営職"を目指せ」
経営共創基盤 冨山和彦CEO
「地球温暖化への危機感がいっそう増している」
気候変動イニシアティブ 末吉竹二郎代表
「観戦が主軸のビジネスモデルを変えていく」
新日本プロレス ハロルド・ジョージ・メイ社長
「“小粒"のサプライヤーのままでいたくない」
ジーテクト 高尾直宏社長
「リモートファクトリーの推進役に」
川崎重工業 橋本康彦社長
「ローカル重視のサプライチェーンが広がる」
NTT 澤田純社長
「危機時にこそ、投資を続ける」
リクルートホールディングス 峰岸真澄社長
「カメラに従来と違う魅力が生まれている」
キヤノン 戸倉剛常務執行役員
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内