──新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発はどのような状況でしょうか。
これまで治療薬を開発してきたインフルエンザやHIVは、ウイルスそのものを10年単位で調べてきた経験がある。抗ウイルス薬のデザインにはウイルスの性質を理解することが必須だ。だが今回の新型コロナはもちろん、SARSやMERSを含めたほかのコロナウイルスでも、学問的な追究は世界的にあまり行われてこなかった。
われわれの研究開発でも、当初想定していた人員や体制では治療薬やワクチン、診断薬ともに不十分だった。本来、ある程度ウイルスのことがわかっている状態から治療薬の開発に入るものなのでウイルスの基礎研究に会社としてはそんなに人を割いていない。
今回はウイルスそのものをゼロから調べるチームを早い段階からかなりの規模で作ったほうが、結果的には開発が早く進んだのかなという反省もある。とはいえ、ほかに進めなくてはいけないプロジェクトもある。HIVの研究者が急にコロナウイルスの研究を始められるわけでもない。社内のリソースマネジメントは簡単ではなかった。
日本ではより「安全性」が求められる
──ワクチン開発では、臨床試験の最終段階まで進んでいるメーカーもあります。勝算はありますか?
遺伝子配列がわかればデザインできるワクチンもあり、例えば、アメリカのバイオベンチャーであるモデルナが開発しているワクチンは40日間でデザインされたと公表されている。すると一般の方々としては、「外国では1カ月くらいですぐ臨床試験が始まっているじゃないか、日本の会社は何をやっているんだ!」ということになる。
ただ、海外で進んでいるワクチンは、どの感染症でも実用化されたことのない技術が用いられている。未知の副反応(副作用)が起きるなど、安全性はどうなるかはわからない。一方で、われわれはいくつかある製法の中で、安全性においては今までの経験が応用できるものを開発している。
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