「コロナワクチンを焦って開発しない」 塩野義製薬 手代木功社長

✎ 1〜 ✎ 69 ✎ 70 ✎ 71 ✎ 72
拡大
縮小
手代木社長は「開発が遅れても、結果的にわれわれのものが求められる将来が来るかもしれない」と述べた(写真:梅谷秀司)

特集「アフターコロナの岐路」の他の記事を読む

感染症薬で国内トップメーカーの塩野義製薬。新型コロナウイルス感染症のワクチンと治療薬の開発を進めており、ワクチンは2020年内に、治療薬は2021年3月までに臨床試験を開始予定だ。
世界中でワクチンの開発競争は異例のスピードで進んでいる。すでに実用化間近の開発品もある中で、後発の塩野義に勝算はあるのか。
さらに、足元ではインフルエンザをはじめとした感染症にかかる患者が激減。新型コロナ予防が徹底されることによって起きた変化だ。塩野義は「Withコロナ」時代の感染症薬市場でどう戦うのか。手代木功社長に聞いた。

 

──新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発はどのような状況でしょうか。

これまで治療薬を開発してきたインフルエンザやHIVは、ウイルスそのものを10年単位で調べてきた経験がある。抗ウイルス薬のデザインにはウイルスの性質を理解することが必須だ。だが今回の新型コロナはもちろん、SARSやMERSを含めたほかのコロナウイルスでも、学問的な追究は世界的にあまり行われてこなかった。

われわれの研究開発でも、当初想定していた人員や体制では治療薬やワクチン、診断薬ともに不十分だった。本来、ある程度ウイルスのことがわかっている状態から治療薬の開発に入るものなのでウイルスの基礎研究に会社としてはそんなに人を割いていない。

今回はウイルスそのものをゼロから調べるチームを早い段階からかなりの規模で作ったほうが、結果的には開発が早く進んだのかなという反省もある。とはいえ、ほかに進めなくてはいけないプロジェクトもある。HIVの研究者が急にコロナウイルスの研究を始められるわけでもない。社内のリソースマネジメントは簡単ではなかった。

日本ではより「安全性」が求められる

──ワクチン開発では、臨床試験の最終段階まで進んでいるメーカーもあります。勝算はありますか? 

遺伝子配列がわかればデザインできるワクチンもあり、例えば、アメリカのバイオベンチャーであるモデルナが開発しているワクチンは40日間でデザインされたと公表されている。すると一般の方々としては、「外国では1カ月くらいですぐ臨床試験が始まっているじゃないか、日本の会社は何をやっているんだ!」ということになる。

ただ、海外で進んでいるワクチンは、どの感染症でも実用化されたことのない技術が用いられている。未知の副反応(副作用)が起きるなど、安全性はどうなるかはわからない。一方で、われわれはいくつかある製法の中で、安全性においては今までの経験が応用できるものを開発している。

次ページ「命」と「副反応」のバランス
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
アフターコロナの岐路
アフターコロナの岐路
スペシャル・インタビュー
「これを乗り越えれば観光業の“勲章"になる」
星野リゾート 星野佳路代表
「われわれにとって、すべてがいい方向に動いている」
ワークマン 土屋哲雄専務
「自動車用鋼板のチャレンジに終わりはない」
東京製鉄 西本利一社長
「国内線を増やすなら今しかない」
ピーチ・アビエーション 森健明CEO
「ゼネコンの枠にとらわれず、ポートフォリオを変える」
大林組 蓮輪賢治社長
「大箱の超高層都市は終わり、自然との一体型へ変わる」
建築家 隈研吾
「GAFAはパートナー、中小企業のデジタル化を支援していく」
リコー 山下良則社長
「働き方を変えないと、生き残れない」
日立製作所 中畑英信 CHRO
「半導体のモノ売りからコト売りを広げていく」
ソニーセミコンダクタソリューションズ 染宮秀樹 執行役員
「『疑似資本』ローンで企業の再建を促したい」
横浜銀行 大矢恭好頭取
「地銀から『地域価値創造会社』に生まれ変わる」
山口フィナンシャルグループ 吉村猛会長兼CEO
「家を快適にすることにお金を使う人が増える」
LIXILグループ 瀬戸欣哉CEO
「小売業は“黄金の方程式"が通用しなくなる」
日本オムニチャネル協会 鈴木康弘会長
「回転ずしは続く。“空いた場所"を取りに行く」
スシローグローバルホールディングス 水留浩一社長
「国全体の『フレックス化』を考えよう」
工業デザイナー 水戸岡鋭治
「百貨店ならではのデジタル化の道筋がある」
エイチ・ツー・オー リテイリング 荒木直也社長
「ベンチャーは少しの判断の遅れで“死ぬ"時代に」
LayerX 福島良典CEO
「出版界が廃れる前に、合従連衡の心構えを」
紀伊國屋書店 高井昌史会長兼社長
「外食の値上げは許せないという意識を変えてほしい」
クージュー 松田公太 CEO
「コロナ後も対面営業の強みは変わらない」
明治安田生命 根岸秋男社長
「実店舗とオンラインの融合がテーマになる」
羽田未来総合研究所 大西洋社長
「インフラからプラットフォームに領域を広げる」
三菱UFJフィナンシャル・グループ 亀澤宏規社長
「多品種、多国籍が強みになる」
ミネベアミツミ 貝沼由久社長
「音楽は変わらない。楽しみ方は変わる」
ヤマハ 中田卓也社長
「ネット社会と付き合うリテラシーが求められる」
イー・ガーディアン 高谷康久社長
「世界をリードする技術革新力が必要だ」
東京エレクトロン 河合利樹社長
「生き残る配信事業者は3つ。そこに入りたい」
U-NEXT 堤天心社長
「コロナで『第5次産業革命』が起きる」
パソナグループ 南部靖之代表
「車の需要は多様化する。新たな収益源に挑戦していく」
ヤナセ 吉田多孝社長
「移動サービスで街を活性化させる」
Mellow 森口拓也代表
「ゲームはディズニーやネットフリックスより稼げる」
ネクソン オーウェン・マホニー社長
「ゲーム内コミュニテイはさらに広がる」
スクウェア・エニックス・ホールディングス 松田洋祐社長
「オールジャパンでワクチン開発を」
大阪大学 森下竜一教授
「科学に基づいた知見や製品を広めていく」
島津製作所 上田輝久社長
「今こそ宗教の多様性が求められている」
東大寺 狹川普文別当
「社内の“空気"が日本企業のM&Aを止めている」
GCA 渡辺章博社長
「商品数は半減、“演出"はどんどん増やす」
ゴールドウイン 渡辺貴生社長
「100円ショップでも100円にはこだわらない」
ワッツ 平岡史生社長
「在宅勤務で家計の負担は増え続ける」
CDエナジーダイレクト 山東要社長
「買収は積極的に仕掛ける」
カインズ 土屋裕雅会長
「量から質へ、自動車ビジネスは商売のやり方を変える」
旭化成 小堀秀毅社長
「中間管理職より“中間経営職"を目指せ」
経営共創基盤 冨山和彦CEO
「地球温暖化への危機感がいっそう増している」
気候変動イニシアティブ 末吉竹二郎代表
「観戦が主軸のビジネスモデルを変えていく」
新日本プロレス ハロルド・ジョージ・メイ社長
「“小粒"のサプライヤーのままでいたくない」
ジーテクト 高尾直宏社長
「リモートファクトリーの推進役に」
川崎重工業 橋本康彦社長
「ローカル重視のサプライチェーンが広がる」
NTT 澤田純社長
「危機時にこそ、投資を続ける」
リクルートホールディングス 峰岸真澄社長
「カメラに従来と違う魅力が生まれている」
キヤノン 戸倉剛常務執行役員
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内