3つのエンジンがすべて止まりかねない
──新型コロナウイルスの影響で、地方の公共交通が大きなダメージを受けています。今後どのように推移するとみていますか。
今までの需要構造が一変すると思っている。
学校や職場に行かなければならなかった状況がリモートワークなどの普及で大きく変わり、地方公共交通では重要なお年寄りの通院需要もリモート診療のような形が増えるだろう。待っていればよくなるという環境ではない。
両備グループでも、6、7月の路線バス利用者数が前年比で約3割減、路面電車は5割減っている。年度内に以前の9割まで戻るかどうか非常に難しい。おそらく2~3年かかるだろう。全国的に見ても以前の9割まで戻ればベストではないか。地方交通事業者の8~9割はもともと赤字。わずかな黒字事業者も今後は赤字になってしまうだろう。
これまでは、路線バス事業が苦しければ観光バスや高速バスなどの部門で支えることもできた。それがコロナで観光も高速も厳しいとなると、3つのエンジンがすべて止まってしまう。
──コロナ禍を受け、特別補助金の新設や税の減免などの地方交通救済策を提言されました。現状の国の対策は不十分ですか。
推定では、全国の地方公共交通は4月以降の半年で赤字額が2000億円程度に達する可能性がある。これに対する充当はまったく不十分。
公共交通は不可欠な事業だからコロナ禍でも運行を維持してくださいと国は言うが、「外に出るな」「移動するな」という中で運行を続けて発生する膨大な赤字をどう補うのか。事業者に責任を押し付けて救済の手をさしのべないというのは悲劇的な問題だ。
もともと経営が厳しい事業者が大半で、さらにコロナ禍で利用者の回復が見込めない状況においては、もうこれまでの制度では維持できない。国として地域公共交通をどう維持していくのかを判断しなければならない時期に来ている。付け焼き刃やパッチワークのような対策では乗り切れなくなっていると認識すべきだ。
──地方公共交通の維持に向けた抜本策として何が必要でしょうか。
私が以前から主張しているのは、まず地域公共交通に関する法整備をきっちりし直すべきだということ。
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