「循環型社会をグローバルに実現したい」 メルカリ 山田進太郎社長

✎ 1〜 ✎ 69 ✎ 70 ✎ 71 ✎ 72
拡大
縮小
メルカリの山田進太郎社長は、今後の投資について「効果を見ながら再加速したい」と語った。写真は2019年12月(撮影:今井康一)

特集「アフターコロナの岐路」の他の記事を読む

多くの人の日常に浸透し始めたフリマアプリのメルカリ。新型コロナによる外出自粛で出品・購入が促進され、事業成長が加速している。8月6日に発表された通期決算(2020年6月期)によれば、コロナ禍においては過去に取引経験のあるユーザーが再びメルカリを利用する傾向も現れているという。国内の年間取扱高は6259億円(前期比28%増)に達した。
グロース(事業規模の拡大)最優先で投資を継続する「勝負の年」。2019年8月、山田進太郎社長は決算説明会で次年度の経営方針についてそう掲げた。結果としては宣言通り、スマホ決済のメルペイやアメリカのフリマ事業に積極的に費用を使い、通期の売上高が762億円(前期比48%増)に拡大した一方、営業赤字は193億円に膨らんだ(前期は121億円の赤字)。
ただ直近の2020年4~6月の決算だけを見ると、営業損益は9億円の黒字となっている(同1~3月は63億円の赤字)。新型コロナを受け、リアルイベントや宣伝に関わる費用を一時的に抑制した影響が大きいものの、日本のフリマ事業の収益性が着々と高まっていることも寄与した形だ。
今期のメルカリの経営方針について山田氏は、日米のフリマ事業、スマホ決済事業の基盤強化を進めることとともに「循環型社会の実現のために必要不可欠な存在になる」という社会的課題を意識したミッションも強調している。コロナ禍でどんな心境の変化があったのか。山田社長を直撃した。

種まきしたことが実った

──「勝負の年」と位置付けた前期(2020年6月期)の成果について、どう評価しますか。

事業ごとに状況は異なるが、全体的に、種まきしてきたことが実った年だった。日本のフリマ事業からいくと、前期は出品・購入の分量をリバランスする、つまりわれわれにとっての商品在庫である出品を促進することに重点を置いた。機能改善やポイント施策が効き、年明けくらいから成長回復の兆しが見えていたが、そこに新型コロナが来た。家にいる時間が増え、メルカリで出品・購入してみようという人が増え、成長は加速した。

アメリカも似たような状況だ。昨年末くらいからオンライン・オフライン両軸でプロモーションを強化しており、徐々に売買を活性化することができていた。コロナ影響という意味では、現地でロックダウンがあったのに加え、アマゾンはじめEC大手で生活必需品以外の商品の配送遅れが目立ったため、エンタメ系の商品売買などでメルカリに目が向いた。結果として、上場前から目指していた月間流通総額1億ドル(約100億円)を達成できた。

2020年2月、メルカリとNTTドコモはキャッシュレス決済などで業務提携した。写真はメルカリの山田社長(左)とNTTドコモの吉澤和弘社長(撮影:鈴木紳平)

メルペイは予定通り、第1フェーズ(ユーザーと加盟店の拡大)、第2フェーズ(フリマ事業との相乗効果の追求)を段階的に進めてきた1年だった。ヤフーとLINEの経営統合発表など、競争環境の変化もあった。そんな中でメルペイも、NTTドコモと加盟店開拓の共通化に向けて提携を結んだり、オリガミを買収して(同社が従前から提携していた)信金中央金庫と地方のキャッシュレス化推進に乗り出したり、着々と手を打っている。

──直近の四半期では営業損益が黒字転換しました。

次ページオンライン完結
関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
アフターコロナの岐路
アフターコロナの岐路
スペシャル・インタビュー
「これを乗り越えれば観光業の“勲章"になる」
星野リゾート 星野佳路代表
「われわれにとって、すべてがいい方向に動いている」
ワークマン 土屋哲雄専務
「自動車用鋼板のチャレンジに終わりはない」
東京製鉄 西本利一社長
「国内線を増やすなら今しかない」
ピーチ・アビエーション 森健明CEO
「ゼネコンの枠にとらわれず、ポートフォリオを変える」
大林組 蓮輪賢治社長
「大箱の超高層都市は終わり、自然との一体型へ変わる」
建築家 隈研吾
「GAFAはパートナー、中小企業のデジタル化を支援していく」
リコー 山下良則社長
「働き方を変えないと、生き残れない」
日立製作所 中畑英信 CHRO
「半導体のモノ売りからコト売りを広げていく」
ソニーセミコンダクタソリューションズ 染宮秀樹 執行役員
「『疑似資本』ローンで企業の再建を促したい」
横浜銀行 大矢恭好頭取
「地銀から『地域価値創造会社』に生まれ変わる」
山口フィナンシャルグループ 吉村猛会長兼CEO
「家を快適にすることにお金を使う人が増える」
LIXILグループ 瀬戸欣哉CEO
「小売業は“黄金の方程式"が通用しなくなる」
日本オムニチャネル協会 鈴木康弘会長
「回転ずしは続く。“空いた場所"を取りに行く」
スシローグローバルホールディングス 水留浩一社長
「国全体の『フレックス化』を考えよう」
工業デザイナー 水戸岡鋭治
「百貨店ならではのデジタル化の道筋がある」
エイチ・ツー・オー リテイリング 荒木直也社長
「ベンチャーは少しの判断の遅れで“死ぬ"時代に」
LayerX 福島良典CEO
「出版界が廃れる前に、合従連衡の心構えを」
紀伊國屋書店 高井昌史会長兼社長
「外食の値上げは許せないという意識を変えてほしい」
クージュー 松田公太 CEO
「コロナ後も対面営業の強みは変わらない」
明治安田生命 根岸秋男社長
「実店舗とオンラインの融合がテーマになる」
羽田未来総合研究所 大西洋社長
「インフラからプラットフォームに領域を広げる」
三菱UFJフィナンシャル・グループ 亀澤宏規社長
「多品種、多国籍が強みになる」
ミネベアミツミ 貝沼由久社長
「音楽は変わらない。楽しみ方は変わる」
ヤマハ 中田卓也社長
「ネット社会と付き合うリテラシーが求められる」
イー・ガーディアン 高谷康久社長
「世界をリードする技術革新力が必要だ」
東京エレクトロン 河合利樹社長
「生き残る配信事業者は3つ。そこに入りたい」
U-NEXT 堤天心社長
「コロナで『第5次産業革命』が起きる」
パソナグループ 南部靖之代表
「車の需要は多様化する。新たな収益源に挑戦していく」
ヤナセ 吉田多孝社長
「移動サービスで街を活性化させる」
Mellow 森口拓也代表
「ゲームはディズニーやネットフリックスより稼げる」
ネクソン オーウェン・マホニー社長
「ゲーム内コミュニテイはさらに広がる」
スクウェア・エニックス・ホールディングス 松田洋祐社長
「オールジャパンでワクチン開発を」
大阪大学 森下竜一教授
「科学に基づいた知見や製品を広めていく」
島津製作所 上田輝久社長
「今こそ宗教の多様性が求められている」
東大寺 狹川普文別当
「社内の“空気"が日本企業のM&Aを止めている」
GCA 渡辺章博社長
「商品数は半減、“演出"はどんどん増やす」
ゴールドウイン 渡辺貴生社長
「100円ショップでも100円にはこだわらない」
ワッツ 平岡史生社長
「在宅勤務で家計の負担は増え続ける」
CDエナジーダイレクト 山東要社長
「買収は積極的に仕掛ける」
カインズ 土屋裕雅会長
「量から質へ、自動車ビジネスは商売のやり方を変える」
旭化成 小堀秀毅社長
「中間管理職より“中間経営職"を目指せ」
経営共創基盤 冨山和彦CEO
「地球温暖化への危機感がいっそう増している」
気候変動イニシアティブ 末吉竹二郎代表
「観戦が主軸のビジネスモデルを変えていく」
新日本プロレス ハロルド・ジョージ・メイ社長
「“小粒"のサプライヤーのままでいたくない」
ジーテクト 高尾直宏社長
「リモートファクトリーの推進役に」
川崎重工業 橋本康彦社長
「ローカル重視のサプライチェーンが広がる」
NTT 澤田純社長
「危機時にこそ、投資を続ける」
リクルートホールディングス 峰岸真澄社長
「カメラに従来と違う魅力が生まれている」
キヤノン 戸倉剛常務執行役員
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内