豪ドルは緩やかに下落、経済は2015年底打ち HSBCのエコノミスト、ブロックサム氏に聞く
――鉱業ブームのときには、海外からの資本流入があった。経済が加熱してバブルが拡大する事態にならなかった理由は?
RBAがかなり積極的に行動したことが奏功した。2009年から金利を引き上げ、2010〜11年には政策金利は4.75%の高水準となっていた。その結果、11年には豪ドルは1.1米ドルまで上昇した。そのため、鉱業以外のセクターの成長が鈍化した。2010〜2011年には住宅価格が下落し、住宅建築も弱かった。消費支出も停滞していた。鉱業ブームの一方で、資産価格の上昇を抑制し、インフレを抑え込むようにしていた。他の国やオーストラリアの過去の歴史と比べて、例のない引き締め政策がとられた。その後、鉱業セクターが落ち込んできたので、RBAは逆に利下げを進めてきた。
中国を中心とするアジアの成長が支える
――今、世界から投資資金が引き上げられているのではないか。
資金流入は確かに減ってきているが、引き上げられているという感じではない。オーストラリアの経済は中国を中心とするアジア経済の成長に支えられている。世界でも急速に成長しているアジア経済との結びつきが強いことが、他の先進国よりも有利な点で、これが、オーストラリア経済のカギを握る主要なテーマだ。
今後、中国や周辺のアジアの国への食品などの輸出が増えるとみている。アジアからの留学生も増えており、中国人観光客も増えている。アジア向けに教育サービス、金融サービス、ビジネスサービスも伸びている。
――では、2016年以降、経済は回復していくのか。
他の先進国に比べて楽観的に見ている。トレンド成長率の3%に復帰可能だ。2016年に3.2%に戻る。日本や欧州と異なる重要な点は、人口が伸びていることだ。オーストラリアの人口は年率1.7%伸びている。そうした経済であれば、年間3%の成長は難しくない。
なぜ人口が伸びているかといえば、移民が増えているからだ。オーストラリアにおける人口増加の半分は移民によるものだ。とくにインドと中国からの移民が多い。オーストラリアの人の28%はオーストラリア以外で生まれた人たちだ。これはかなり高い比率で、米国でもその比率は15%だ。このことがオーストラリア経済にダイナミズムをもたらしている。
――移民を促す政策を積極的に打ってきたのか。
移民の数を増やしたり減らしたりを細かく調節する政策がとられてきた。いろいろな調査で、住みたい地域のトップに挙げられている。経済が成長し、雇用が生み出されていることに加え、安定し、安全な民主主義国家であることがその理由だ。
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