性犯罪の「みだら」と「わいせつ」、どう違う? 報道ではどのように書き分けているのか
「『みだらな』という言葉は、各地の青少年条例に登場する言葉です。たとえば、東京都青少年健全育成条例の18条の6では、『何人も、青少年とみだらな性交または性交類似行為を行ってはならない』と規定しています。『みだらな行為』というのは、これのことでしょう」
では、「わいせつな行為」とは?
「そちらは、刑法の言葉です。強制わいせつ罪を定めた刑法176条には、『暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は……』(刑法176条)という一節があります」
二つの「行為」の実際上の違いは何だろうか?
罪名だけでは「罪の軽重」はわからない
「大きな違いは、青少年条例のみだらな行為は『性交を含む』のに対して、刑法176条のわいせつな行為は『性交を含まない』という点です。暴行や脅迫を用いて性行為に至った場合には、強姦罪という別の犯罪になります」
では、罪が重いのはどちらか?
「法律上は、『わいせつな行為』(6ヵ月以上10年以下の懲役)のほうが、『みだらな行為』(東京都の場合2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)よりも、罪が重いとされています。しかし実際には具体的な事案の中身を見ないと、どちらのほうが罪が重いか判断できません。
たとえば、13歳以上の未成年に対するわいせつ行為で、同意がなければ『強制わいせつ』になり、同意があれば『みだらな行為』をしたとされます。ただ、その判断は難しく、それぞれの刑罰の内容も幅が広いため、事案や状況によっては『みだらな行為』をした場合のほうが罪が重いこともあります。
事件には個性があります。事件の詳細を見ずに、一概に罪名だけで罪の軽重を比較することはナンセンスです」
報道では、性犯罪行為を「いたずら」「暴行」などと表現することもある。こうした書き分けについて、元新聞記者の長谷川弁護士は次のように指摘していた。
「『いたずら』は、犯罪行為を軽く見せようとする加害者側の意図に沿うものとして、報道では使うべきではないとする新聞社もあります。同じく『暴行』についても、事件の凶悪性をあいまいにするとの理由で、使用するべきではないという意見もあります」
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