こうした2014年の相場展開は、同年春に執筆した拙著「インフレ貧乏にならないための資産防衛術」で想定していたとおりの展開だ。同書では2012年末から発動したアベノミクスを、標準的な経済学的思考に基づき肯定的に評価している。
性急な消費増税を「アベノミクスの弱み」とする一方、それで日本株が停滞しても「投資家にとって投資チャンスになりうる」とした。なぜなら日銀の金融政策が一番の鍵であり、「金融緩和強化が日本株反転のきっかけになる」と考えたからだ。
また、為替市場については、1ドル100円台半ばが、ドル円の購買力平価における均衡値であることを強調し、「米国経済の成長率の高まりを背景に、FRBの量的緩和縮小がスムーズに進むと予想され、1ドル110円台半ばまで円安ドル高が進む可能性がある」「(円安で)日本の脱デフレは強力に後押しされるだろう」と予想した。一連の予想はおおむね的中した。
2015年、米国経済は一段と加速する
では、2015年はどのような年になるか。世界経済の現状を俯瞰すると、2014年と似たような環境が続くと思われる。FRBが丁寧に金融政策の調整を模索する中で、米経済の堅調な回復が続く。2014年は米国において緊縮財政が緩和したことが同国の成長を支えたが、2015年は米政府の財政支出拡大が成長率を押し上げる可能性が高い。米経済成長率は一段と加速すると予想する。
最も注目度が高い米国の金融政策については、労働市場の需給においてスラック(ゆるみ)が残る中で、FRBが利上げを急ぐ、あるいは断続的な利上げを行う可能性は低い。2014年10月以降は原油価格が急落しているが、原油価格の低位安定が続くと見られ、インフレ期待が抑制される中でFRBは余裕を持って金融政策の舵取りを行うことができる。こうした経済政策運営が続く中で、米国主導で世界経済の成長率は2015年にやや加速するだろう。
原油安は、先進国の交易条件を改善させ経済成長率を押し上げ、そしてECBと日銀の金融緩和強化を後押しする。2014年に世界経済の足を引っ張った欧州と日本の成長率は高まる余地が大きい。
特に注目されるのは、ECBがソブリン債の大量購入による量的緩和に踏み出すかどうかである。ドイツ国債と周縁国国債の金利スプレッド解消を試みるドラギ総裁の強い意志を反映し、強力な金融緩和導入が実現すれば、欧州で2013年の日本のような復活が見られるかもしれない。
こうした中で、2015年は米欧の金融政策の成否が、日本の投資家の投資リターンを決定づけるだろう。そして、金融政策や地政学リスクを巡るマーケットの心理の揺らぎを上手く利用することで、投資リターンを高める余地が大きくなるのではないか。
なお、拙著では「消費増税を乗り越え、プラス2%のインフレ目標実現が近づき、より確実にインフレが定着すれば、(途中省略)大幅な株高が想定できる」と書いている。米欧経済や原油価格の下落という外部環境、そして11月の安倍首相による消費増税先送りの決断によって、2015年におけるこのシナリオ実現も、かなり期待できるだろう。
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