C-2輸送機の輸出構想は、「画に描いた餅」 事実を踏まえない空虚な政策は止めるべき

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政府の武器輸出やその民間転用品輸出振興の掛け声だけは勇ましいが、武器輸出入の現状を把握しているとは言えず、理念だけが空回りしている。防衛省のこの種の「有識者」を集めた審議会でも、呼ばれるのは「有識者」とは呼べない武器取引の現場も知らない人たちばかりで有識者会議とは羊頭狗肉の感がある。

防衛省の開催した「防衛省開発航空機の民間転用に関する検討会」議事要旨には、国が輸出を目論むUS-2飛行艇の消火型に関し、以下のように分析している。「消防飛行艇の市場は、世界で180機程度であり、全てをUS-2の民間転用機に置き換えられれば、現在の消防飛行艇の市場価格であるCL415・1機あたりの価格約30億円と対抗できる価格帯になる可能性あり」。

競合機はすでに量産の実績

CL415はすでに量産されている(写真:ボンバルディア社)

だが、競合機と想定されているCL415(現在はボンバルディア415と呼称されている)は76機以上が量産されている。双発で最大離陸重量は陸上では19.95トン、水上では17.24トン。価格は25億円である。対してUS-2は最大離着陸重量 47.7トン、最大離着水重量は43.0トン、機体重量は2倍で調達単価は1機120億円であり、事実上、別なカテゴリーの機体である。CL415は双発、対してUS-2は4発で運用コストも桁違いに異なる。更にCL415ユーザーがUS-2に乗り換えるならば、ハンガーや機体の洗浄設備などに対する投資も必要となる。

このようなお伽話を大まじめに論じてもマトモな結論がでるはずもない。それを「有識者」たちが、大まじめに議論しているのは滑稽ですらある。

航空機などの大型プラットフォームよりもコンポーネントや素材のほうが余程有望である。武器輸出を目指すのであれば、実現の可能性が低い「大物狙い」よりも、軍事や航空関連の見本市に継続的にパビリオンを出し、コンポーネントや素材を関連のメーカー、特に中小企業の支援するなどの地道な努力をこそを行うべきだ。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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