だが川崎重工業は耐空証明を取るための作業を行っていない。同社には耐空証明をとった実績がないので、作業に慣れたエアバスやボーイングなどよりもより多くの時間とコストがかかるだろう。実際にMRJを開発している三菱航空機と、その親会社である三菱重工業にとっても、これは大きな苦労だ。しかもC-2はMRJとは異なり、国内で開発した専用のコンポーネントが多く採用されており、これらも個別に証明を取る必要がある。
C-2の耐空証明を取るためのコストは機体の2機程度分のコスト(およそ400億円)を要する可能性がある。コンポーネントを実績のある外国製に置き換えれば、その分コストを抑えることができるが、事実上、別の機体となるので再設計と各種試験なども必要であり、これまた大きなコストがかかる。
C-2の民間転用機は売れてもせいぜい20機もいかないだろう。対してMRJは最低でも500機ほどの販売を見込んでおり、耐空証明を一機当たりに割り振ればコストはかなり小さくなる。
そもそもC-2は調達単価が高い。ペイロード(積載量)が約77トンと、C-2の2倍以上もあるボーイングC-17と同程度もする。円安が進んだ現在でもロシアやウクライナ、エアバスなどの競合機と比べても割高だ。しかもまったく実績がない。当然、緊急時に他のユーザーからパーツなどを取り寄せて急場を凌ぐこともできない。その上、使用コンポーネントも専用なので、維持コストがかなり高くなる。
自衛隊もPKOなどではアントノフの大型輸送機に車輛やヘリなどの輸送を頼んでいるが、滑走路が舗装されていない空港でも運用できるからだ。だがC-2は軍用戦術輸送機でありながら舗装された滑走路でしか運用できず、アフリカなどの奥地の空港では使用できない。当然C-2を採用した会社はこのようなPKOなどの案件を受注できず、ビジネス機会を失うことになる。
機体の補強をすれば積載量も低下
また空自は未だにC-2のペイロードは30トンとしているが、機体の強度不足の不具合で補強をする必要があり、その分、ペイロードは低下するだろう。既にC-2のペイロードは26トン程度との新聞報道もある。また防衛省の最新のライフ・サイクル・コスト報告ではC-2のペイロードをC-1の約3倍としている。C-1のペイロードは約8トンであるので、24トン程度ということになる。
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