35歳を超えてなお「マリッジブルー」の現実 婚約者との結婚を延期する、38歳の本音

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だが、異動することによって万事解決するのだろうか。彼女が公立小学校の音楽教師であり続けるかぎり、また同じようなことを繰り返すのではないか。つねにエネルギッシュで教師が天職であるように見える西田さんに疑問を投げかけると、意外な答えが返ってきた。

「僕も一度、おかしくなってしまったことがあるのです。新任1年目がたまたま1年生担当で楽だったので、すっかり仕事をなめてしまいました。2年目に5年生の担任になって、授業がまったくうまくいかないことに気づいたときは遅かった。

授業の様子を見に来た先輩の先生に首をかしげられるたびに自信がなくなり、学校行事の計画もおろそかになって、優しい先輩から何度も『しっかりしろ。ちゃんとやれ』と叱責されました。

今から考えると、確かにひどい授業をしていましたね。夜もあまり眠れなくなり、30分おきぐらいに『あの準備はしたっけ? あれは大丈夫なのか』と不安になって目覚めてしまう。心配した先輩が休みの日に訪ねて来てくれたこともありましたが、人と顔を合わせたくなかった。本当にひどい1年間でした」

やはり結婚は、彼女の精神状態次第

西田さんの場合、救いとなったのは「あえて異動させない。そのまま繰り上がりで6年生を担当させて、より大変な状況で鍛える」という校長の判断だった。新年度になると西田さんもようやく腹を据えて授業ができるようになり、無事に卒業生を見送ることができた。この経験があるからこそ、彼女にも苦難を乗り越えて成長してほしいと西田さんは思っている。

「彼女が勤務している学校は確かに大変な環境にあります。なんとか3年間は頑張ったので異動してもいいと思います。かといって、彼女に反省点がないわけじゃない。

私は何も悪くない、と愚痴ばかり言っていても成長しません。たとえば、音楽祭の仕上がりに不安があれば、もっと早い段階で担任たちに相談して協力を仰ぐべきでしょう。僕はできるだけやんわりとアドバイスしているのですが、『私の大変さがちっともわかっていない!』と泣かれてしまい、話になりません」

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