地上戦に勝てなかった「ネット選挙」 ネットがすぐ票に結び付くという「幻想」

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安倍晋三首相は、演説を終え次の会場への移動時には必ずタブレットを取り出し、終えた演説会場の様子をまめに配信することで“武器”とした。また、事務所を訪れたある自民党議員は、選挙事務所に大モニターを置き、街宣活動の“今”を動画で流すということをやってはいたが、これはごくごく少数派だった。

「空中戦」より「地上戦」、結局は「ライブ選挙」に

ネット解禁後初の今回の衆院選は、ネットがどんな戦術に有効かがわからないまま終わったということだったようだ。総理のようにメディアや全国民をターゲットにした戦術の“武器”になれば別なのだが、多くの候補者は、ネットに時間を費やすくらいなら、外に出て訴える、握手で接するというライブ選挙に向かった結果のようだ。

選挙用語では「上滑り」というが、表面をなぞっても心までは掴んでいない、メディアで取り上げられたり、「追い風」「向かい風」というような情報による「空中戦」ではなく、どぶ板を踏んだ「地上戦」の方が確実だという意識が働いたのかもしれない。さらにネットを見ている人は、そもそも支持者なのか、というすそ野の限界もある。これが、ほとんど利用されることもなく、ネット選挙話そのものが話題にもならなかった理由ではないか。

やはり、選挙は、顔を合わせ、直接訴え掛け、握手をし、必死に語り掛けるに限ることを証明した。やはり、古典的なライブでしか成り立たないもののようだ。“人生を賭けた大博打”は、自らの目で確認できるものしか信用できないのであろうか。

とはいえ、折角解禁された選挙広報の一つだから、今後、効果的な使い方が工夫されていくことを望むところだ。
 

有馬 晴海 政治評論家

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ありま はるみ

1958年 長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。1996年より評論家として独立し、テレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う。政界に豊富な人脈を持ち、長年にわたる永田町取材の経験に基づく、優れた分析力と歯切れのよさには定評がある。ポスト小泉レースで用いられた造語「麻垣康三」の発案者。政策立案能力のある国会議員と意見交換しながら政治問題に取り組む一方で、政治の勉強会「隗始(かいし)塾」を主宰し、国民にわかりやすい政治を実践している。主な著書に「有馬理論」(双葉社)、「日本一早い平成史(1989~2009)」(共著・ゴマブックス)「永田町のNewパワーランキング100」(薫風社)、「政治家の禊(みそぎ)」(近代文芸社)など。

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