なぜ自民党は沖縄の民意を読み違えたのか 安倍首相が辺野古移設案に絶望した日
衆院選で圧勝した翌日、上機嫌で会見した安倍晋三首相の表情が唯一、どんよりと曇った瞬間があった。沖縄県内の4小選挙区すべてで自民党候補が敗れたことを問われたときだ。
「残念な結果です」
アベノミクスの是非を問うた安倍首相だったが、沖縄での争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設。2014年1月の名護市長選、11月の県知事選、今回の衆院選で、「反辺野古」陣営に3連敗を喫したのだ。この結果は、普天間をめぐる一つの現実を突きつける。辺野古移設の頓挫。そして、普天間の固定化である。
辺野古案は消え普天間を改修
「県外移設」という意見もあるだろうが、現実的な可能性はゼロに等しい。辺野古の拒否は、普天間の現状維持にしか帰着しないのは目に見えている。
基地問題を担当する日本政府幹部は、
「日米合意の辺野古移設をやめたとは誰も言えない。3年後の名護市長選まで待つしかない」
とため息をつきながら、今後の展開をシミュレートした。
「沖縄県が埋め立て承認の取り消しに出たら行政訴訟になるが、これは日本政府が勝つかもしれません。しかし、今後、基地を造るなかで土砂の搬入など細かい案件で県の許可が必要になる。しかし翁長(おなが)県政はまず協力しない。そうなると国ができる部分だけをのろのろと進めるだけ。そうしているうちに名護市長選になり、推進派が勝てば流れが変わる。その後の知事選でも推進派が勝つか、翁長雄志(たけし)知事の態度が変われば、あるいは……」
なんともか細く、終わりの見えない道である。日本はそれでいいかもしれないが、米国はそんな次元で物事を考えない。