名護市長選が「沖縄基地問題」に与えた衝撃 辺野古への機能移設は困難に 

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写真:ロイター/アフロ
 1月19日に行われた沖縄名護市の市長選挙で、現職の稲嶺進氏が圧勝した。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する稲嶺氏の勝利により、移設案は暗礁に乗り上げるのか。国際関係論、沖縄問題の専門家で、米軍基地再編問題に詳しい、米ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授に聞いた。

 5年以内の辺野古基地完成は不可能

――名護市長選の影響をどう見ていますか?

現職の稲嶺進市長の再選によって、辺野古に沿岸埋め立て方式による海兵隊航空基地を建設する計画を実行することは、確実に難しくなるだろう。

――自民党は勝つためにいろいろ手を尽くしたようですが、稲嶺市長を負かすことはできませんでした。

マイク・モチヅキ
ジョージ・ワシントン大学教授
ハーバード大学にて博士号取得。専門は日本政治および外交政策、日米関係、東アジア安全保障。ブルッキングス研究所シニア・フェロー、ランド研究所アジア太平洋政策センター共同部長などを歴任。2001年から2005年、ジョージ・ワシントン大学エリオットスクールのガストン・シガー記念センター所長。現在は、同センター日米関係部長を務め、また同センターの「アジア太平洋における記憶と和解」研究・政策プロジェクトの共同責任者も務める。

自民党は名護市に手厚い補助金を用意し、かつ島袋吉和前市長が立候補を辞退し、候補者として辺野古移設支持の末松文信氏に一本化させることに成功した。それにもかかわらず、現職の稲嶺市長が勝利した。稲嶺市長が4年前に初当選した後、中央政府は名護市に対する金融支援を減らしていた。この金融のアメとムチというぶざまな手を使っても、名護市の市民には通じなかったということだ。

――今回の選挙結果は沖縄の政治ムードについて何を物語っていますか?

この選挙結果は、辺野古移設に対する地元の反対が、いかに大きいかということを示している。この反対とともに埋め立て基地の建設の技術的な障害(たとえば、県外から大量の泥を運び込む必要がある)を前提にすると、5年以内に辺野古基地を完成させることは不可能だ。それは5年以内に普天間飛行場を閉鎖させたいという仲井眞弘多知事の要請にも背くことになる。

――仲井眞知事によると、安倍晋三首相は5年以内の普天間飛行場閉鎖に同意しています。

そのとおり。安倍首相が仲井眞知事を裏切りたくなければ、彼が率いる政府はすぐにも米国に働きかけて普天間移設の代替地を一時的にせよ2019年までに探さなければならない。心配なのは、日米両政府とも辺野古の沿岸埋め立ては計画どおり建設されるという、見せかけの偽装にこだわり続けることだ。仲井眞知事が繰り返し述べているように、普天間の機能は沖縄県外のどこかに移設するほうが早い。皮肉にも、稲嶺市長の再選は仲井眞知事の主張をかえって強めることになる。

――日米両政府が代替地を探さないとするとどうなりますか?

日米両政府とも辺野古の計画に頑固にこだわり続けるようなら、沖縄の米軍基地に執拗に反対する知事が、仲井眞知事が辞めた後に登場する可能性がある。また、嘉手納空軍基地のような戦略的に極めて重要な米軍基地に対する沖縄の人たちの支持が弱まることにもなる。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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