地上戦に勝てなかった「ネット選挙」 ネットがすぐ票に結び付くという「幻想」
マニフェストとは少し性質が異なるが、選挙戦術の武器の一つとして2013年の参院選から解禁されたのがネット選挙だ。
社会全体がネット時代になったとはいえ、発信する側だけではなく、受けとめる有権者側にも、まだまだ年齢差や利用度によって格差が大きく、公平を期する選挙という場での使用になかなか踏み切れなかったようだが、安価で簡単便利なツールでもある、ということで、ポスター、政見放送、選挙ハガキ、街宣車などの選挙公報の一つに加わることになった。
「お知らせ」「お願い」・・戦術がなかった候補者
それまでは、ネットの選挙使用は選挙違反だった。だが、「より多くの有権者に情報を簡単に伝えることができる広報として、自由に使ってください」ということになり、180度の転換だ。
解禁後初の国政選挙となった参院選では、当然、利用方法が話題になり、話題性を狙ったものも含めて、それなりに期待に沿うものもあった。選挙事務所を作らず、ネット上にしか事務所を持たない候補者、前述したポスターや街宣車など、ネット以外の選挙公報をまったく行わない候補者まであらわれ、そのまま「ネット候補」と囃し立てられるものまでいた。
そこまでとはいわないまでも、握手の相手や演説の模様を写しては解説文を加えてオンタイムで支持者に配信するという具合に、おぼつかない手つきでタブレットを操作するベテラン議員も見受けられた。
それが、今回の衆院選ではすっかり鳴りを潜めた感がある。同時に、候補者か送られてくる情報は「明日の街頭演説」や「個人演説会の案内」とともに、「何を送ればいいか、わらかない」「なかなか考えを文章にする時間がない」というものばかりだった。
中には、「追い付かれた。やばい。さらなる支援の輪を」「報道では与党がさらに議席を伸ばす大変厳しい選挙、力をお貸しください」というお願いものばかり。「政界一のネット魔術師」の異名をとったこともある河野太郎議員ですら、「ネット選挙、皆様はどんな情報を期待していますか」というものだ。
まったく戦術もなく、武器にもなっていない。その河野議員からは、選挙後には「初めてのネット選挙で十分な発信ができず、申し訳ございませんでした」と来たが、これがすべてを物語っているようだ。
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