
富士山を借景に「欧州の芸術品」オリエント急行の客車が通過する奇跡の一瞬
アガサ・クリスティ原作の映画『オリエント急行殺人事件』での華麗な車内の人間模様、『007 ロシアより愛をこめて』の車内での甘いラブシーンと、一転してロシアのスパイとの壮絶なアクションシーン、そして日本人には縁遠い「国際列車」という響き……。長年のあこがれでありつつも、一度は廃止されたオリエント急行。その列車が1982年5月、「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス(VSOE)」としてロンドン─パリ─ベニス間に復活を成し遂げた。
これには血が騒いだ。私はなんとか時間と費用を捻出してプラチナチケットといわれる乗車券を手に入れ、ロンドンからベニスへVSOEの旅人となった。オリエント急行は、それほど私の心をヒートアップさせる存在だったのである。
当時、かつての豪華客車を復活させ走らせていたのは、VSOEのほかに「ノスタルジー・イスタンブール・オリエント急行(NIOE)」があった。こちらは貸し切りのツアー列車などに利用され、走行範囲も東ヨーロッパにまで及んでいた。だが、あのあこがれの列車がユーラシア大陸を横断し、日本にやってくるなどということは、まずありえないと思っていた。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら