くら寿司、台湾でも「ビッくらポン」で勝負 成長シナリオを占う重要な試金石に

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台湾でも「ビッくらポン」は人気を博すか

今回、台湾にも導入した「ビッくらポン」は、皿カウンター回収システムと連動し、5皿投入に1回、さまざまなゲームが始まり、当たりが出るとガチャ玉がもらえるといったアミューズメント機能を提供するもの。くら寿司が「成算を持って進出している」とまで語る背景には、独自の強みが認知されて人気化すれば、進出が起爆剤となり、市場自体が拡大するとの読みがあるようだ。

デフレ時代の勝ち組と言われた回転すし業界だが、魚介価格の高騰に急速な円安が追い打ちをかけ、各社の経営環境は厳しさを増している。そんな中、くら寿司が12月12日に発表した2014年10月期決算は、最終利益が前期比約2割増の30億円と過去最高を記録。好調の背景には、すしの好調に加えて、ラーメン、コーヒーといったサイドメニューが単価アップに貢献していることも大きい。

今期に入っても、11月の既存店売上高が前年同月比で11.3%増と勢いはさらに加速。15年10月期も最終利益は3.5%増の31億円と、最高益を連続更新する計画だが、足元の勢いからすれば保守的な見通しともとれる。

台湾を橋頭保に海外拡大へ

とはいえ、くら寿司の顧客の中心は子供連れの30代ファミリー層。長い目で見れば、少子高齢化が進む国内だけでは市場は先細りのおそれがある。業績好調を受けて、実質無借金を続けるなどリスクをとれる体力は十分にある。早いうちにまず台湾で海外出店のノウハウを蓄積し、ここを橋頭保として成長市場である東南アジアへと横展開する――。今回の狙いは明白だ。

もくろみどおりに台湾での展開が進めば、得られる果実は大きい。日本に比べて原材料費や人件費が安く、おまけに法人税も17%と低い。数年で数十店規模にまで拡大できれば、連結業績にも相当の貢献が見込まれる。

くら寿司によれば、台湾のオープン初日は「大盛況だった」と、上々のスタートを切ったようだ。業績が絶好調とはいえ、回転すしは外食の中でも原価が高く、薄利多売のビジネスであることに変わりはない。1皿が100円という価格帯を考えれば、国内では採算の合う立地にも限りがみえてくる。アジアという広大な地平に描いた成長シナリオが実現するかどうか、まずは来年1年が試金石となりそうだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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