ファイナンスの授業でスイーツ脳をぶん殴られる
ビジネススクールで勉強を進めていくにつれ、ある種の不安が胸をよぎるようになる。外部環境分析やら、市場での価値やら、ポジショニングやらという概念を使いこなすにつれ、自分の市場価値についても深く考えるようになった。そして、時間価値という概念を理解し、さらに焦る。
思えば私の妹②は、まだ20代だというのに「絶対に子供が欲しい、できればたくさん!」と早々に結婚し、2年前にすでに1人目を出産、今回が2度目の妊娠である。若いほうが妊娠しやすいと聞いたことはあったが、それを体現している者が身内にいるとなると、さすがに身につまされる。
ファイナンスの先生が言っていた。「今日の100円は明日の100円よりも価値がある」。もしかして、いや、もしかしなくても、今日の私は、来年の私より、価値があるということ?
同じ授業を受講していたアラフォーOLサヨちゃんが、青い顔をして私に話しかけてきたのも、その頃だった。サヨちゃんは私と同じ非エリート組。何年か前まで、ヨーロッパを放浪しながらカフェ店員をしていたという、ちょっと変わったキャリアの持ち主である。
「大変……、人生にも時間価値がある……、早く結婚しないとヤバい!!」
いったいどうしたのかと思えば、彼女も3人兄弟のいちばん上、下の妹弟が先に結婚し、子育てにいそしんでいるのを見て、そしてビジネススクールで自分のことを見直す中で、私と同じ疑問にぶつかったのである。
「やっぱり……そう思う?」
「うん……年下で優秀なエリートの人たちに比べて、確かに人生経験は豊富だけど、キャリアにはつながらんことばかりしてきた……。そして、今さらガリ勉をしても、生かす道は限られている! そこに幸せはあるのか?!」
「そ、そんなMBAを全否定するようなこと言わなくても……」
「でも、考えてもごらんよ、誰もいない家に帰って独りでコンビニ飯を食べる日がこれからも続くのよ? 耐えられる? ちょっと勉強をストップしてでも、婚活に重点を置いたほうがいいかもしれない!」
よくよく周りを見渡せば、年下で優秀なエリートの人たちの多くは、20代で人生の伴侶を見つけ、マンションを購入し、そのうえでビジネススクールに通い、キャリアアップを目指していた。生活基盤を安定させずに突っ走っている私とはえらい違いである。
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