インド新戦略車はトヨタを救えるか(上)
12月3日の夕刻。インド第5の都市、バンガロール市内にある「ナンディ・トヨタ」本店は、平日にもかかわらず多くの人でにぎわっていた。同店はインドではトヨタ車販売店の草分けの一つだ。
「家族4人がゆっくり乗れそうなところがいい」。米P&Gの現地法人に勤務している男性は、そう言って財布からゴールドカードを抜き出した。前々日に発表されたトヨタ自動車のインド戦略車、「エティオス」の予約金を支払うためだ。
「まだ実車がないのに、2日間で166台もの予約が入った。期待以上の手応えだ」。ナンディ・トヨタのK・I・ジョジョ社長は笑顔を見せる。同氏はこの5年間、「インドでも早く小型車を発売してほしい」と、トヨタ自動車のインド子会社であるトヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)に繰り返し訴えてきた。その悲願が成就した格好だ。
トヨタがインドに進出したのは1997年。99年に現地生産を開始した多目的車「クオリス」の耐久性が高く評価され、トヨタブランドの認知度は大いに上がった。その後継モデルとして投入された「イノーバ」の人気も高い。それでも、インドの乗用車市場におけるトヨタのシェアは、09年時点でわずか3%だ。
一方、トヨタとほぼ同時期にインドに進出した韓国の現代自動車は、比較にならない躍進を遂げた。2009年の乗用車シェアは15・9%と、トヨタに5倍超の差をつけた。明暗を分けたのは小型車の有無だ。
インドでは1600cc以下の小型車が自動車販売の75%を占めている。安価なのが最大の理由だが、小回りの利くクルマが好まれることも大きい。インドの都市部では渋滞が深刻で、狭い道も多いためだ。
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