アップル、開発拠点の狙いは「自動車」だ! iPhoneから広がるビジネスへの布石

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iPod以来、中には多数の日本製コンポーネントが詰まっている。

まず第一に、日本の携帯電話向けパーツメーカーとの関係強化だ。iPhoneなど、アップルの主要製品で日本メーカーが製造開発するコアコンポーネントが多く使われているのは、ご存じの通りだ。アップルがスマートフォンのトップメーカーであることは当面変化せず、しかも、今後、より高付加価値でハイエンドな機種に特化していくと考えられる。しかも、それを大量に仕入れる。コンポーネントメーカーにとって、アップルへの過度の依存は経営リスクにもなるが、見逃すこともできない大事な顧客である。最新のコンポーネントを他社よりも早く、大量に仕入れることを求めるアップルとの関係強化は、リスクヘッジとして大きな意味をもつ。

ただし、アップルはこれまでも、日本法人を拠点に、そうした企業との関係を築いてきた。また、日本のパーツだけでiPhoneが出来ているわけでもない。それだけで拠点を構える理由とするのは弱い。

そんな中、特に筆者が注目するのは素材系だ。軽量化へのアプローチは限界に近づいている。堅牢さ・薄さ・軽さを満たしつつ、数千万台を需要期までに用意する、という量産性までが求められることになると、新しい素材の導入は必須だ。素材系とその加工技術では、日本企業に一日の長がある。製造方法まで含めて新しいアプローチを作るならば、メーカーと密な関係を構築する必要が出てくる。アップルはアルミ切削による「ユニボティ」を作る際、製造機器メーカーとの太いパイプを生かして独自のライン構築を行った。同様のパターンを狙うなら、日本に研究拠点を作る価値は大きい。

「iPhoneと連携する機器」の共同開発を強化

次にポイントとなるのは、アップルが「iPhoneと連携する機器」に力を注いでいる、という点だ。2013年に発表したiOS7以降、アップルは、iPhoneを軸に「他の機器やサービス」との連携強化に努めている。まずは自動車連携のために「CarPlay」を発表し、2014年のiOS8では家庭内ソリューション向けの「HomeKit」、ヘルスケア連携用の「HealthKit」などを準備した。iPhoneなどのiOS搭載機器を売るために、iOSと連携する機器とサービスを充実させ、商品の外で魅力を強化する……という作戦だ。ここでは外部企業との関係、特に、アップルがこれまで付き合ってきた企業とは文化も異なる。

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