同レポートは米国の知的財産保護政策に大きな影響を与え、その後のIT産業の発展にも貢献したと言われています。
その後も同団体からは「イノベート・アメリカ」と呼ばれる、当時IBMのCEOだったサミュエル・パルミサーノの名を冠した通称「パルミサーノ・レポート」など、イノベーションを主軸にした経済成長に必要な数々の政策提言が発表されています。そしてその後、ブッシュ政権下でのイノベーション法案(National Innovation Act)制定や米国競争力イニシアティブ(American Competitiveness Initiative)の端緒となったとされています。
一方で、このような産業界からの骨太の政策提言活動は、日本ではこのところあまり見られないように思います。日本では最近でも「3本目の矢」と称して、経済構造転換の役割を当然のごとく政府に求めていますが、米国でそれらを推進しているのは、実は政府ではなく企業ではないのか。留学後、日本における企業と政府の関係を観察していくうえで、そのような思いを持つに至ったのです。
ロビイングを理解する経営トップはいるか?
米国留学後は、ワシントンでのシンクタンク勤務(インターン)、経営コンサルティング会社を経て、現在は青山社中という政策シンクタンクに共同代表としてかかわりつつ、国・企業の競争力向上のために、国内外を問わず企業がいかに政策にかかわっていくべきなのか、継続的に研究活動を行っています。
最近ではアイゼンハワー・フェローシップという、米国国務省のファンディングも得ているプログラムに日本代表として参加し、約2カ月弱、全米を回りながら、ワシントンおよび各州レベルで企業がどのように政策形成にかかわっているか、さまざまな関係者のインタビューを通じ調査・研究をしてきました。
そうした中で見えてきたのは、自社の競争力向上のために、国内外で規制や国際標準化、また貿易交渉なども含め、連邦・州を問わず政府に戦略的にかかわっていくことの重要性を理解する米国企業のトップマネジメントの姿でした。そしてトップの号令の下、グローバルに資源も大きく投入されています。最近でも、たとえばフェイスブックのザッカーバーグCEOはより良質な海外のエンジニアの確保を目指し、移民制度の改革を目的とした政治団体をほかのIT企業とともに設立。積極的にオバマ政権に働きかけています。
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