日本ではあまり報道されていませんが、海外の企業はロビイングの世界で日々戦っています。たとえば、金融産業とのかかわりで言えば、先ほども挙げた米国における銀行業と証券業の分離を定めたグラス・スティーガル法の撤廃には、ウォール街が大きくかかわったとされています。
また、ITエンジニア不足に悩んでいる米国の有力なIT企業が、企業の垣根を超えて移民法改正に動いていたりするケースもあります。
最近の日本企業の事例でも、ソフトバンクによるスプリント/T-Mobile買収、東芝によるウェスティングハウス買収でも、ロビイングを積極的に行ったことが報道され、一部の日本企業ではロビイングの重要性に気づき始めています。これから日本が注力しようとしている鉄道インフラや航空機輸出などでも、ますますロビイングが必要な局面に入っていくかもしれません。
新たなコミュニケーションのあり方としてとらえ直す
日本には、政治と企業の密なコミュニケーションと聞いて、癒着など嫌悪感を感じる方もいるかもしれません。が、一方でロビイングは、単に一企業だけではなく、日本全体の産業競争力の観点からも、企業と政府の新たなコミュニケーションのあり方として、積極的にとらえ直す必要性が出てきていると感じています。
国内だけではなく、海外ではなおさらのこと、さまざまな場面で自らルール策定にかかわっていかないと、自社の競争力に直接影響してしまう。そういう時代がもう来てしまっているのです。
この連載では、日本ではあまり知られていないロビイングの世界とその技術について、各界の有識者と対談しながら考えていきます。東京とワシントンを舞台に、ロビイスト経験者、多国籍企業、政府関係者、ロビイストを育成している教育機関、国際弁護士、PR会社経営者、研究者など、数多くの方にインタビューを行っていきます。
少しでも多くのビジネスパーソンに、日本企業復活のための「特効薬」としてロビイングをとらえなおす、そのような連載にできればと思っています。ご期待ください。
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