ただ、権限は絞っています。権限が無限にあるということはやるべきことも無限にあるということなので、ある程度フィールドを制限しないとうまくいきません。たとえば、新規事業をやるにしても、うちはERPを作る会社なのにゲームを作りたいと言い出す人もいるんです。カネの工面や営業部門の編成を何とかできるならいいけど、1人の能力には限界があります。
また、ある製品を作るとき、優秀な人間を10人ほど集めて横並びに権限を与えたのですが、1年半経っても何もアウトプットがなかったので解散させたことがあります。誰かがリーダーシップを取り始めると必ず他の誰かが潰しにかかるんですよね。優秀な者同士が集まるとせっかくのプロジェクトがうまくいかないケースもあります。1人に権限を与えて下に若い層をつけるなど、チーム内で権限のバランスを取ることも大切です。
--評価制度もユニークですよね。
従業員が1000人を超えると顔もわからなくなるので、同僚同士がお互いを評価する「相互多面評価」という制度ができました。
自分よりも優秀か、自分と同程度か、自分のほうが優秀か判断をし、平均値で評価が決まるようになっています。当社の文化を守り、優秀な人間を正当に評価するためには、こうせざるをえなかったんです。評価が割れる場合もありますが、それは社内の文化が壊れているときです。異常値をつける人間を呼び出して話を聞くと、たいてい「仕事はできるけど人間的にNO」「遅刻が多い」など仕事とは関係のない理由で評価しているんですよね。全体朝礼などでもあらためて話をし、評価の仕方を是正しています。
--優秀な人材が流出しない仕組みはありますか。
「カムバック・パス」という制度があります。優秀な部下が辞めたいと言ったら、直情的にならずに必ずこのパスを出せと言っています。
もっといい会社があるのではと考えたり、創業したいなどの理由で全体的には年間5%、優秀な人間だけでも年間1%は辞めていますね。どんな理由で辞めようと戻ってこようと、無条件で3年間は受け入れています。